放射化分析による茶樹根の活力診断

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要約

成木茶園においてユーロピウム(Eu)を根から吸収させた後、茶葉中に取り込まれたEu量を放射化分析することにより、茶樹の生育を阻害することなく、土壌中の根の活力を評価できる。

  • 担当:野菜・茶業試験場 久留米支場 育種素材研究室
  • 連絡先:0993-76-2126
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:育種、栽培
  • 対象:茶
  • 分類:研究

背景・ねらい

土壌中に生育する根の活力を的確に把握することは様々な栽培要因、環境要因等の影響を解析する上で不可欠である。従来、茶樹根の活力測定においては根の掘り上げが前提となっており、多大の労力を要するだけでなく、茶樹の生育阻害や、掘り上げ時の根の損傷等も無視できない。放射化分析法は省力的で、樹体への影響も小さい根の活力測定手法であるが、茶樹への適用条件については検討がなされていない。そこで、茶園における根の活力診断への適用条件および適用限界を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 塩化ユーロピウム(EuCl3・12H2O)を用い、Eu濃度で1500ppmの水溶液とする。この水溶液に希塩酸を加えてpH5.3~5.5に調整した後、0.2%の寒天末を加えて加熱し、軽くとろ味をつける。
  • 茶園における根の活力測定部位は、茶樹の株元からうね間中央までの距離および深さに応じて設定する。長さ40cm(茶樹1または2株を含む)×幅20cm×深さ20cmの土層を想定し、この土層全体にEuが広がるよう20カ所にわけて各5ccずつ、計100ccのEu溶液を注入器を用いて注入する。
  • 2週間後に、注入したうね間側樹冠の表層から20~30枚の成葉を採取し、乾燥後粉砕して微粉末とする。この粉末100mgをポリエチレンの小袋(10mm×20mm)に2重に入れ、シーラーで溶着密封し、放射化分析試料とする(図1、図2)。
  • 断根処理を行った茶園において本法を根の活力診断に適用した結果を図3に示す。各土層での根の活力の強さは断根処理法の違いおよび土層の深さに応じた変化を示しており、これらの活力の程度は当該土層の白色根の量的分布ともよく一致する(図4)。従って、本法は非破壊に近い茶樹根の活力評価法として有効と判断される。

成果の活用面・留意点

  • 本法では反復間の変動がかなり大きい。これは土壌中の根の分布、Eu溶液の土壌中での広がり等が一様でないことに起因すると思われる。このことから、本法は同一測定条件下での根の活力の相対的な評価に限定すべきである。
  • 測定すべき個体はそれぞれ隣接処理個体の影響を受けないよう1~2株分の間隔を空けることが必要。

具体的データ

図1 茶園における根の活力測定手順

図2 茶樹の部位別、処理濃度別Eu含有量

図3 断根後の茶園におけるEu吸収量の分布

図4 断根後の茶園における白色根の分布

その他

  • 研究課題名:茶樹の樹勢回復のメカニズム解明とその制御技術の開発
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成6年度(平成2~6年度)
  • 発表論文等:(1)茶樹成木における断根処理が根群の再生及び光合成に及ぼす影響.
    日作紀.61(別2),1992.
    (2)Non-destructive analysis of tea plant root systems by an
    activable tracer method.Root ecology and its practical
    application. 3,1992.
    (3)茶樹成木園における深耕断根処理が一番茶収量に及ぼす影響.
    日作紀,62(別2),1993.
    (4)茶園における土壌通気が断根後の根の再生に及ぼす影響.
    日作九州支部会報,60,1994.