食品の免疫機能評価に有用なヒト免疫担当融合細胞株の樹立方法

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要約

ヒト融合用親細胞株を新規に樹立し、ヒト免疫担当細胞と融合して新たなヒト免疫担当融合細胞株の取得方法を開発した。この融合細胞株は、茶を含む食品成分の免疫機能評価に利用できる。

  • キーワード:ヒト融合用親細胞株、ヒト免疫担当融合細胞株、免疫機能評価
  • 担当:野菜・茶業試験場茶利用加工部製品開発研究室
  • 連絡先:0547-45-4964
  • 部会名:野菜・茶業、食品
  • 専門:製品開発
  • 対象:茶
  • 分類:研究

背景・ねらい

茶を含む食品成分の抗アレルギー作用の検定、評価系では、種々の免疫担当細胞株が必要となる。特に、生体内と同様の免疫機能を有したヒト由来の各種免疫担当細胞株が利用できれば、抗アレルギー機能のみならず、多くの免疫機能評価が可能となる。しかしながら、これらの検定系に有用なヒト細胞株は少なく、入手が困難であった。そこで、効率よくヒト免疫担当細胞を株化するため、新規にヒト融合用親細胞株を樹立し、これと生体内から分離した免疫担当細胞とを融合することによって、種々のヒト免疫担当融合細胞株を取得することを試みる。

成果の内容・特徴

  • ヒト免疫担当細胞株を効率よく取得するための方法として、図1のように細胞融合法を応用した。ヒト融合用親細胞株として、アミノプテリン感受性でかつ低細胞密度下、および無血清培地(インスリン、トランスフェリン、エタノールアミン、セレナイト)中でも増殖可能な3種のクローン、ICLU-B(ヒトB細胞株)、-T(ヒトT細胞株)、-E(ヒト好酸球様細胞株)を新たに樹立した。これらのヒト融合用親細胞株とヒト免疫担当細胞(末梢血リンパ球など)とを融合し、各種免疫担当細胞の株化が可能となる。
  • これらのヒト融合用親細胞株を用いて得られる融合細胞株の取得効率は、細胞を発ガン物質や放射線処理する従来法と比較して、20倍以上の高い効率を示す(表1)。また、ICLU-Tを用いる場合、融合促進剤としてポリエチレングリコールにレシチンを添加する方法を開発した。これによって、少なくともレシチンを添加しない場合の10倍以上に融合効率が上昇する。
  • 融合細胞株の細胞種は、ICLU-Bを用いた場合、B細胞由来の細胞株、ICLU-Tを用いた場合、T細胞由来の細胞株が主である。ICLU-Eを用いた場合はB、T由来細胞も取得されるが、ICLU-B、-Tの場合よりも高い確率で、単球様の細胞株が取得される(図2)。したがって、細胞種に応じたヒト融合用親細胞株を用いることにより、効率のよい細胞の株化が可能となる。
  • 食品の免疫機能の検定・評価系では、細胞培養に用いる血清成分の影響により、その機能が同定不可になることもある。したがって、血清を含まない無血清培養の必要性が高い。ICLU-B、-T、-Eを用いて得られる融合細胞株のほとんどは、この無血清培地(前述)で培養することが可能である(図3)。

成果の活用面・留意点

本研究成果により、食品の免疫機能評価・検定系に有用なヒト免疫担当細胞株を作製することが可能となる。ただし、融合細胞株の染色体数が正常細胞より増加しているために、染色体脱落による細胞機能の消失も報告されている。したがって、細胞を定期的にクローニングすることが望ましい。

具体的データ

図1:細胞融合の概念図

表1:新規ヒト樹立親細胞株の融合効率

図2:取得したヒト融合細胞の由来

図3:取得した融合細胞株の無血清培養増殖曲線

その他

  • 研究課題名:ヒトアレルギー関与細胞株の樹立とその細胞機能の解析
  • 予算区分 :生研機構
  • 研究期間 :平成9年度(平成8~12年)
  • 研究担当者:山本 万里・川原 浩治・長田 和浩・辻 顕光
  • 発表論文等:
    1.無タンパク培地中で培養可能なヒトおよびマウス細胞株の樹立について.日本農芸化学会,1997年大会,1997.
    2.Effect of polysaccharides derived from tea on growth of human cell lines in serum free culture. 15th ESACT meeting (France, Tours), 1997.
    3.融合細胞株とその取得方法;特願平10-61889