低温時の土壌水分制限によるキャベツ幼植物の耐凍性向上と糖蓄積
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要約
キャベツ幼植物の低温順化時に土壌水分を制限すると、十分に灌水した場合より、さらに耐凍性が向上する。脱順化時にも土壌水分が少ない方が、耐凍性が維持される。低温順化時には糖が増加するが、土壌水分を制限することで糖蓄積が促進される。
- キーワード:キャベツ幼植物、低温順化、土壌水分、耐凍性、脱順化、糖蓄積
- 担当:野菜・茶業試験場生理生態部ストレス耐性研究室
- 連絡先:059-268-4632
- 部会名:野菜・茶業
- 専門:生理
- 対象:葉茎菜類
- 分類:研究
背景・ねらい
キャベツは作期に適した品種が存在するが、作型の前進化や気象条件により、寒・凍害が発生するため、耐凍性付与技術の開発が望まれる。一方、野菜では、耐 凍性に関する研究が遅れており、基礎的知見も少ない。そこで、耐凍性機構の解明のため、低温順化・脱順化時の土壌水分がキャベツ幼植物の耐凍性と糖濃度に 及ぼす影響を明らかにした。
成果の内容・特徴
耐凍性は、一般に凍結・融解後の生存や電解質漏出で測定される。本報では、-8°C凍結・融解後の葉片からの電解質漏出程度で示し、電解質漏出程度が高いほど、葉組織が凍結により傷害を受け、耐凍性が低いことを表す。
- 5°Cの低温順化処理でキャベツ幼植物(2~3葉期)の耐凍性が獲得される。この時に灌水を制限して土壌水分を減少させた方が、十分に灌水した場合よりも耐凍性が向上する(図1)。
- 低温順化後に温度を上昇させる脱順化処理により、低温順化で獲得された耐凍性は低下する。無灌水で低温順化した後は、脱順化時も土壌水分の少ない方が、土壌水分の多い場合よりも耐凍性が消失しにくい(図1)。
- キャベツ幼植物の地上部乾物率は、低温順化により増加し、脱順化により減少する(図2)。
- 低温順化処理により糖濃度は急激に上昇するが、土壌水分の少ない方が、土壌水分の多い場合よりも糖濃度が高い(図3)。
- 脱順化処理時には、低温順化で蓄積した糖は減少するが、土壌水分が少ない場合は、糖の減少も抑制される(図3)。
成果の活用面・留意点
収穫期のキャベツの耐凍性については、本成果などをもとに、結球状態を考慮に入れた検討が必要である。また、葉菜類の高糖度化栽培技術の開発にも活用が可能である。
具体的データ




その他
- 研究課題名:生体ストレスの解明と制御
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成9年度(平成4~12年)
- 研究担当者:佐々木英和・岡田邦彦・今田成雄・小田雅行(現大阪府大)
- 発表論文等:Freezing tolerance and soluble sugar contents affected by water stress during cold acclimation and deacclimation in cabbage seedlings. Scientia Horticulturae.(印刷中)