寒冷地における短日処理によるイチゴの当年苗の花芽分化促進と端境期出荷

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要約

寒・高冷地において、イチゴの早生品種の当年苗に反射性被覆資材を用いて、6月中下旬から25日間、8時間の短日処理を行うことにより、冷蔵施設を用いずに花芽分化を促進し、単価が高い9~10月の端境期に出荷することができる。

  • キーワード:寒・高冷地、イチゴ、早生品種、反射性被覆資材、短日処理、花芽分化、端境期
  • 担当:野菜・茶業試験場野菜育種部生態特性評価研究室
  • 連絡先:019-643-3414
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:生理
  • 対象:果菜類
  • 分類:普及

背景・ねらい

イチゴの端境期は7~10月であり、夏秋イチゴの国内生産はほとんど行われていない。この時期の輸入イチゴは品質が劣るため、国産の品質の良いイチゴの生 産が望まれている。これまで暗黒低温処理や夜冷短日処理による端境期出荷も検討されたが、施設が必要で、処理コストが高いため、寒・高冷地では普及してい ない。そこで、夏期冷涼な寒・高冷地の気象条件を活かして、短日処理により低コストでイチゴの花芽分化を促進し、主力品種を端境期に出荷する技術を開発する。

成果の内容・特徴

    • 2月から'女峰'等の早生品種の親株を保温してランナーの発生を促進して、5月中旬までに苗採りを行い、地床、またはポットで育苗する。短日処理前の窒素中断は不要である。
    • 6月中下旬から25日間、8時間日長となるように苗を反射性被覆資材でトンネル状に覆って、短日処理する(表1)。週に1回、短日処理を行わない日があっても、処理有効株率は低下しない。処理終了時に花芽分化を確認後、直ちに無被覆のハウス内に定植する。
    • 出蕾後に雨よけの被覆を行い、9月から頂果房の果実を収穫する(表3)。その後、無加温で、越冬させて春の出蕾開花期に保温し、5月から再び収穫する。収量は秋どりで1~1.5t/10a程度である。一果重は短日処理の開始時期が早まるにつれて低下する(表3)。
    • 暗黒低温処理や夜冷短日処理に比べて、大がかりな施設を用いずに、低コストで花芽分化を促進し、単価が高い端境期に'女峰'等の主力品種を出荷することができる。主力品種を用いるため、春どりの果実も出荷できる。

    成果の活用面・留意点

    • 冷涼な地域の気象資源を活かして、低コストで単価が高い端境期に出荷することができ、寒・高冷地におけるイチゴの新作型として普及が期待される。
    • 短日処理による花芽分化を安定させ、また、果実品質の低下を避けるために、適用地域は東北地方以北と高冷地とする。
    • うどんこ病と灰色かび病の防除は十分に行う。

    具体的データ

    表1:短日処理の時期、期間と窒素中断が出蕾、開花に及ぼす影響

    表2:短日処理期間中の外気の日最高気温と日最低気温

    表3:短日処理の開始時期が収量の推移と一果重に及ぼす影響

    その他

    • 研究課題名:露地野菜の低コスト生育制御技術の開発
    • 予算区分:経常
    • 研究期間:平成9年度(平成9~12年)
    • 研究担当者:古谷茂貴・浜本 浩・安場健一郎
    • 発表論文等:イチゴのポット苗への短日処理が収穫時期に及ぼす影響. 園芸学会東北支部平成9年度大会研究発表要旨. 1997.