キャベツのセル成型苗に発生したPythium megalacanthumによる苗立枯病

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要約

キャベツのセル成型苗の胚軸が水浸状から白色腐敗し,苗立ち枯れとなる病害が発生した。病原菌を分離・同定した結果,キャベツの病原菌としては未記載であるPythium megalacanthumであった。

  • キーワード:キャベツ、セル成型苗、胚軸、白色腐敗、苗立ち枯れ、Pythium megalacanthum
  • 担当:野菜・茶業試験場環境部病害研究室
  • 連絡先:059-268-4641
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:作物病害
  • 対象:キャベツ
  • 分類:研究

背景・ねらい

1996年4月に三重県安濃町でキャベツのセル成型苗の立ち枯れを引き起こす病害が発生した。また,1997年4月および10~11月に三重県内の民間の野菜育苗施設においても同様の病害が発生した。本病害の病原菌を同定し,発病条件等を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 本病の病徴は最初,胚軸部が水浸状になり地上部が萎れる。病状が進み,やや乾燥すると胚軸部が白色に腐敗する(図1)。
  • 本病の罹病部では,直径約40μmの突起のある蔵卵器内に卵胞子が形成され(図2),蒸留水に浸すと遊走子を形成した。
  • 本病の病原体を菌糸の性状,有性・無性生殖器官の形態からPythium megalacanthum de Baryと同定した(表1、図2)。
  • 本病は10°Cの低温で病徴が激しくなった(図3)。
  • 本菌は播種3週間後までの苗には有傷接種によって立枯れを引き起こしたが,4週間後の苗には立枯れ症状を示さず、生育段階が進んだ苗には被害を与えないものと考えられた。
  • 本病は初発株と同じトレイ内の株によく伝染し易い。

成果の活用面・留意点

  • 罹病部を光学顕微鏡観察すると,特徴的な卵胞子が認められるので容易に診断できる。
  • 秋から春にかけての低温時に発生し易く、水によって伝染すると推察された。
  • 病原菌が同定されたことにより,適切な薬剤の登録,選択が行える。

具体的データ

表1:分離菌とP.megalacanthumの形態比較

図1:罹病株と健全株の胚軸

図2:分離菌の顕微鏡写真

図3:異なる温度条件において分離菌により示される病徴

その他

  • 研究課題名:III.機械化栽培管理技術の確立 5)省力環境管理システムの策定 (2)省力病害防除システムの策定 イ.セル成型苗で発生する苗立枯病
  • 予算区分:地域総合
  • 研究期間:平成9年度(平成9~10年)
  • 研究担当者:窪田昌春・我孫子和雄
  • 発表論文等:キャベツのセル成型苗に発生したPythium megalacanthum de Bary による苗立枯病.日本植物病理学会報,63巻3号,1997(講演要旨).