葉ダイコン散播によるアブラナ科野菜根こぶ病菌の休眠胞子密度低減効果
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要約
葉ダイコンCR-1を散播し、鋤込むことにより、土壌中のアブラナ科野菜根こぶ病菌休眠胞子密度を無作付の5~30%に減少させることができる。これは葉ダイコンによる根こぶ病菌の根毛感染の誘引が一因である。
- キーワード:葉ダイコンCR-1、根こぶ病菌休眠胞子密度、根毛感染
- 担当:東北農業試験場総合研究部総合研究第3チーム
- 連絡先:024-593-5151
- 部会名:野菜・茶業
- 専門:作物病害
- 対象:葉菜類
- 分類:研究
背景・ねらい
アブラナ科野菜根こぶ病の防除法として、輪作作物の有効性が知られ、ダイコンに関しては青首ダイコン株跡において根こぶ病菌密度(以下、菌密度)が低減すること、葉ダイコンを前作すると発病が抑制されるなどの報告がある。このうち、葉ダイコンを用いる方式は、一定期間栽培した後に鋤込むだけで効果があり省力的である。しかし、その発病抑制機構は明らかではない。そこで、葉ダイコンの作付けによる土壌中の根こぶ病菌密度の低減率と有効範囲及びその低下要因を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 葉ダイコン(CR-1)を10a当たり6~18L散播する。1~2ヶ月栽培後に鋤込み、1ヶ月以上経過後にハクサイを栽培する。
- 葉ダイコン栽培後の圃場全体の土壌菌密度は無作付区に比べ約5~30%に減少する(表1、図1A)。後作のハクサイの発病度は、104個/g接種区で顕著に低下するものの、106個/g接種区では大きく低下せず、菌密度が高い場合には葉ダイコンの作付1回では発病軽減効果は不十分である(図1B)。
- 根こぶ病菌汚染土壌(約107個/g)に葉ダイコンを作付けすると、休眠胞子から発芽した遊走子による根毛感染が認められるが、根こぶは形成されない(図2)。
- 根こぶ病菌は土壌中では遊走子の状態あるいは根毛感染しても根こぶを形成しない状態では根こぶ病菌は死滅すると言われている。したがって、根こぶ病抵抗性葉ダイコンの作付による根毛感染の誘引は根こぶ病菌密度の低減要因の一つであり、葉ダイコンは土壌中の菌密度を減少させる「おとり植物」である。
成果の活用面・留意点
- 普通(腐植質)黒ボク土で得られた成果であり、他の土壌では別に検討が必要である。
- 根こぶ病の菌密度が高い場合には、葉ダイコンの栽培だけでは発病抑制効果がみられない場合があるので、他の防除手段(農薬、pH矯正など)と併用する。
具体的データ



その他
- 研究課題名:畑作野菜土壌病害に対する輪作等作物の対抗性評価
- 予算区分 :総合的開発(高収益畑作)
- 研究期間 :平成9年度(平7~9年)
- 研究担当者:村上弘治・對馬誠也・宍戸良洋・菅野紹雄
- 発表論文等:
1.おとり植物としてのダイコンを用いたハクサイ根こぶ病の総合防除.
国際園芸学会アブラナ科野菜シンポジウム講要,1997.
2.ハクサイ根こぶ病のおとり植物による菌密度低減効果.園学雑, 66(別2),1997.