トウガラシ辛味成分(カプサイシノイド)の簡易少量検定法

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要約

トウガラシの辛味成分(カプサイシノイド)の含有量を、少量のサンプルから短時間で評価する簡易検定法を確立した。 本方法は、ピーマン育種で辛味のない個体の選抜に有効である。

  • キーワード:トウガラシ、辛味成分、簡易検定法、ピーマン育種、選抜
  • 担当:野菜・茶業試験場野菜育種部ナス科育種研究室
  • 連絡先:059-268-4653
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:育種
  • 対象:果菜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

ピーマンの育種においては、育種素材としてトウガラシを用いることが多く、育種過程において辛味成分(カプサイシノイド)を有する個体の選抜除去が必要 である。しかし、官能検査では舌の能力と評価可能な個体数に限界があり、育種の効率化を図るには、辛味の無い個体を選抜するための官能検査に代わる選抜法 が望まれる。そこで少量のサンプルから短時間で辛味成分含有量を評価する方法を確立した。

成果の内容・特徴

  • 測定方法:
    1)胎座組織を切り出し、マイクロチューブに入れる。
    2)四塩化炭素を加え激しく撹拌し、抽出液を新しいマイクロチューブに移す。
    3)水酸化ナトリウム液を加え激しく撹拌する。
    4)3,000rpmで遠心分離し、上清を新しいマイクロチューブに移す。
    5)246nm の吸光度を測定する。
  • 抽出の精度・効率:本簡便抽出法による辛味成分の回収率は、胎座組織を完全に摩砕する抽出法に比べ、約65%である。本法により1日当たり 200個体の検定が可能であり、これは従来法の約2倍の効率である。
  • 結果の評価:246nm の吸光度が 0.1以下のものは辛味は感じられず、1.2以上では強い辛味、0.1 から1.2ではそれらの中間的な辛味が感じられる。
  • 育種選抜:吸光度 0.1以下の個体を選抜することにより、中辛~強辛味個体の選抜除去を効率的に行える。

成果の活用面・留意点

  • 本法により、特に辛味の強いトウガラシを素材としたピーマンの育種が効率的に行える。なお、辛味成分含量は栽培条件によっても変動すること、本法の定量性は高くないことから、選抜個体については官能検査による確認が必要である。
  • 辛味成分は水に溶け難く、少量のサンプルを扱うことから、胎座の切り出しに用いたメス等は、毎回エーテル等で洗浄する必要がある。

具体的データ

図1:トウガラシ辛味成分(カプサイシノイド)の少量簡易検定法のフローチャート

図2:カプサイシノイド定量法の検量線

表1:ピーマン・トウガラシの辛味成分簡易検定結果

表2:トウガラシ果実の部位別抽出液の吸光度

その他

  • 研究課題名:ピーマンのCMV抵抗性育種
  • 予算区分:経常・素材化(ジーンバンク)
  • 研究期間:平成9年度(平成8~10年)
  • 研究担当者:佐藤隆徳・阿南豊正・松永 啓・伊藤秀和・門馬信二・吉田建実
  • 発表論文等:ピーマンのCMV抵抗性育種に関する研究(第5報)トウガラシ辛味成分(カプサイシノイド)の簡易少量検定法.園学雑,66(別2),264~265.