ハクサイ抽台性遺伝子座に連鎖するRAPDマーカー

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要約

'つけな中間母本農2号'は安定した晩抽性を示す中間母本であり、低温条件のみでは花芽誘導されにくい。 後代系統の栽培実験と遺伝解析を通じて、この抽台性の遺伝子座に連鎖するRAPDマーカーを見いだした。

  • キーワード:つけな中間母本農2号、晩抽性、低温条件、花芽誘導、遺伝解析、遺伝子座、連鎖、RAPDマーカー
  • 担当:野菜・茶業試験場野菜育種部種苗工学研究室
  • 連絡先:059-268-4655
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:バイテク
  • 対象:葉茎菜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

ハクサイ類の春どり栽培における不時抽台を回避し安定生産を図る上で有用な晩抽性を持った育種材料として'つけな中間母本農2号'が育成されており、この系統を利用した晩抽性育種に期待がもたれている。また、この系統の晩抽性は少数の遺伝子座に支配されていると推定されている。そこでRAPD等の分子マーカーを用いた遺伝解析を行い、抽台性を支配する遺伝子座に連鎖したマーカーを検索し、育種現場に利用できる技術を開発することとした。

成果の内容・特徴

  • RA1255cは、'つけな中間母本農2号'の晩抽性を引き継ぐ系統DH27と通常抽台性を持つ系統G309の交雑試験において見いだしたRAPDマーカーである。RA1255cは、F↓2集団(DH27×G309)の開花期別バルクDNAを鋳型に用いたRAPD分析で差を示し、抽台性を支配する遺伝子座に強く連鎖すると考えられる(図1)。
  • RA1255c のバンドの有無でF↓2個体をG309型(バンド有り)とDH27型(同無し)に区分すると、DH27型個体はF↓2集団中で晩生側に位置する(図2)。
  • 上記DH27型とG309型の抽台・開花日は、統計的にDH27型が有意に晩生である(表1)。
  • 以上、RA1255cは晩抽性個体を明確に判別できるDNAマーカーであり、幼苗期などの生育初期から抽台性について予備選抜(1次選抜)に利用することができる。

成果の活用面・留意点

  • RA1255cは早生親G309に由来する優性マーカーであるため、当該RAPDを保持する早生系統を交配親とする交雑組合せ世代についてのみ利用が可能である。
  • RA1255cの塩基配列を同定することで、より汎用性が高いDNAマーカーの開発が期待される。

具体的データ

図1:F2バルク間でのRA1255cの多型

図2:DH27×G309交雑F2における抽台とRAPDマーカーRA1255cの分離

表1:RA1255cを有しないDH27型と有するG309型のF↓2 2集団間における抽台及び開花に関するコルモゴロフースミルノフ経験関数有意差検定

その他

  • 研究課題名:野菜RFLP利用技術の開発
  • 予算区分:経常・バイテク育種
  • 研究期間:平成9年度(平成9~11年)
  • 研究担当者:鯵坂秀敏・釘貫靖久・榎本末男・平井正志
  • 発表論文等:Brassica campestrisの晩抽性遺伝子座に関するRAPDマーカー.育雑 47別2,pp.209, 1997.