ランダムプライマーを利用したキクの枝変わりの周縁キメラ構造の解析

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要約

キク品種'Pink Marble'とその枝変わり品種における周縁キメラ構造解析のためのランダムプライマー3種を選抜した。茎頂分裂組織に由来する植物体のDNA解析から、枝変わり中4品種の周縁キメラ構造が確かめられた。

  • キーワード:キク、枝変わり品種、周縁キメラ構造、ランダムプライマー
  • 担当:野菜・茶業試験場花き部育種法研究室
  • 連絡先:059-268-4661
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:バイテク
  • 対象:花き類
  • 分類:研究

背景・ねらい

キクでは突然変異による枝変わりが広く利用されている。キクの枝変わり品種の多くは周縁キメラ構造を有するとされているが、その詳細は明らかではない。近年、品種識別に関する新しい手法としてDNA分析が行われるようになった。そこで、ランダムプライマーを用いたDNA分析をキクの枝変わり解析に適用し、周縁キメラ構造の確認を試みた。

成果の内容・特徴

  • 異数性を伴う周縁キメラ構造の存在が推定されているキク品種'Pink Marble'とその枝変わり8品種を材料として、茎頂の分裂組織におけるL1層に由来する植物体を小花培養によって作出し(図1)、PCR法を用いてランダムプライマーによるDNA多型の検出を試みた。
  • 用いた238種類のランダムプライマーの中で、A22、E62およびE68の3種類のランダムプライマー(表1)で安定した多型が認められた。プライマーA22とE68による多型は、'Blue Marble'および'Coral Marble'と他の品種との間で、また、プライマーE62による多型は、'Florida Marble'、'Bronze Marble'および'Orange Marble'と他の品種との間で認められた(表2)。
  • 小花培養由来植物体の葉および根(ともにL1層由来)、周縁キメラ構造を有する枝変わり植物体の根(L3層由来)および葉(L1,L2およびL3層の混合)を用いたDNA分析結果の比較から、DNAレベルにおいても、枝変わり中'Blue Marble'、'Polished Marble'、'Apricot Marble'および'Coral Marble'の4品種が周縁キメラ構造を有することが確かめられた(表2)。

成果の活用面・留意点

本ランダムプライマーは品種'Marble'における周縁キメラ構造の解析に利用可能である。同様の手法を用いることにより、他の枝変わり品種でもランダムプライマーの検索と周縁キメラ構造の確認が可能と思われる。

具体的データ

図1:小花培養によるLI層由来植物体の作出

表1:安定した多型の認められたランダムプライマーとそれにより増幅されるマーカーバンド

表2:'Marble'系9品種の葉と根由来DNAの解析結果

その他

  • 研究課題名:DNA分析等によるキクの周縁キメラ構造の解明
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成9年度(平成5~10年)
  • 研究担当者:岸本早苗・柴田道夫・間竜太郎・平井正志(野菜育種部育種法研)・池田郁美(福井園試)
  • 発表論文等:Analysis of the periclinal chimeric structure of chrysanthemum sports by random amplified polymorphic DNA. Acta Horticulturae(投稿中)