農薬の茶樹樹冠内部への到達量とその天敵への影響
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要約
茶樹への農薬散布の際、摘採面上散布の場合は、樹冠内部への到達農薬量が極めて少なく、そこで生息している天敵への影響は少ないが、樹冠内部散布の場合は天敵に大きく影響する。
- キーワード:茶樹、摘採面上散布、樹冠内部、到達農薬量、天敵
- 担当:野菜・茶業試験場茶栽培部虫害研究室
- 連絡先:0547-45-4101
- 部会名:野菜・茶業
- 専門:作物虫害
- 対象:茶
- 分類:研究
背景・ねらい
茶樹は摘採面下に厚い葉層があり、摘採面上からの薬剤散布では農薬が樹冠内に届きにくいため、ケナガカブリダニ等の天敵の活動には影響が少ないと考えられる。茶樹への農薬散布法について、散布農薬の葉層各部への到達量と天敵への影響等を検討する。
成果の内容・特徴
- 葉層の厚さ約15cmの茶園で摘採面上から散布した農薬の葉層中央部、葉層下部への到達量は摘採面への到達量のそれぞれ20%、2%であり、樹冠内部への到達量は極めて少ない(図1)。
- 摘採面上から薬剤を散布した区(慣行区)においても、摘採面上からと樹冠内部へ薬剤を散布した区(樹冠内散布区)においても、無散布区と同様にカンザワハダニが増加するとケナガカブリダニが増加し、カンザワハダニの密度を抑制する(図2)。これは、ケナガカブリダニが薬剤抵抗性を獲得していることによる。
- カンザワハダニのピーク密度は、慣行区では無散布区に比べて有意差がないが、樹冠内部散布区では無散布区より有意に高い(図3)。摘採面上から散布した農薬のケナガカブリダニに対する影響は極めて小さいが、樹冠内部に散布した農薬の影響は薬剤抵抗性を獲得したケナガカブリダニに対しても大きい。
成果の活用面・留意点
- 樹冠内部への薬剤の到達量は、葉層の厚さ、新芽の存否により異なる。
- 本試験はケナガカブリダニに対する薬剤抵抗性が強度に発達した圃場で行われたものである。樹冠内部と摘採面上から散布された農薬の影響の相対的関係は全国の茶園に適用可能であるが、天敵に対する薬剤の絶対的影響の程度は天敵種・系統の薬剤抵抗性程度により異なる。
具体的データ



その他
- 研究課題名:茶害虫と天敵の個体群動態に及ぼす樹冠内部の影響
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成9年度(平成9~13年)
- 研究担当者:河合 章・山口優一・木幡勝則
- 発表論文等:茶樹の摘採面と樹冠内部へ散布した殺虫剤の天敵への影響.応動昆 第42回大会講要,1997.