嫌気条件下におけるブロッコリーからの含硫揮発性成分の発生
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要約
嫌気条件下でブロッコリーから発生する異臭成分として、メタンチオールやジメチルジスルフィド等 の含硫揮発性成分を同定した。これらの含硫揮発性成分は、嫌気条件下で生体膜の 機能が低下する ことにより、健全な細胞内では離れて存在していた酵素と基質の局在性が失われ、 両者が接触する ことにより生成される。
- キーワード: ブロッコリー、メタンチオール、ジメチルジスルフィド、含硫揮発性成分、生体膜
- 担当:野菜・茶業試験場 生理生態部 輸送貯蔵研究室
- 連絡先:059-268-4635
- 部会名:野菜・茶業
- 専門:食品品質、加工利用
- 対象:花菜類
- 分類:研究
背景・ねらい
低酸素・高二酸化炭素環境は青果物の呼吸を抑制し、鮮度保持に効果があることが知られて いる。 しかし、貯蔵する青果物によって最適環境ガス濃度は異なり、環境中の酸素濃度が低すぎたり 、 あるいは二酸化炭素濃度が高すぎると様々なガス障害が発生する。ここでは、ブロッコリーを 材料に 用い、ガス障害の一つである異臭発生の機構解明について検討する。
成果の内容・特徴
- 嫌気条件下でブロッコリーを貯蔵すると著しい異臭が発生する。そのヘッドスペースガスから エタノール、アセトアルデヒドの他に、メタンチオールやジメチルジスルフィドといった含硫 揮発性成分が同定された(データ略)。
- 含硫揮発性成分は、嫌気条件下で生体膜の機能が低下することにより( 図1 、 2 )、健全な細胞内では離れて存在していた酵素と基質の細胞内局在性が失われ、その結果、酵 素と基質が接触することによって生成されると考察される( 図3 )。
- 花蕾部からの含硫揮発性成分の発生量は葉部や茎部に比べ極めて多い。それは、花蕾部で含硫 揮発性成分の生成に関与する酵素の活性が高く、前駆物質の含量が多いことによる( 図4 )。
- ブロッコリーの主要な栽培品種の中に嫌気条件下で含硫揮発性成分の発生が極めて少ない品種 は見いだされていない(データ略)。
成果の活用面・留意点
- ブロッコリーの流通条件を改善する上での基礎資料になる。
- ブロッコリーで明らかした嫌気条件下における含硫揮発性成分の発生機構は、他の Brassica属作物にもあてはまる。
具体的データ

図1 花蕾部切片からの電解質漏出程度の変化

図2 花蕾部から調製したミクロソーム膜脂質における全脂肪酸に対する遊離脂肪酸の割合

図3 嫌気条件下に保存したブロッコリー からの含硫揮発性成分の生成機構
図4 ブロッコリー部位別のメタンチオール発生量,S-メチル-L-システインスルホキシド含量およびC-Sリアーゼ活性
その他
- 研究課題名:野菜貯蔵中のガス障害発生機構の生化学的解明
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成10年度(平成7~11年)
- 研究担当者:壇 和弘・永田雅靖・山下市二
- 発表論文等:1) Formation of volatile sulfur compounds in broccoli stored under anaerobic condition. J. Japan. Soc. Hort. Sci., 65,867-875, 1997.
2) Production of volatile sulfur compounds by broccoli under anaerobic conditions. CA'97 Proceedings, 4,39-45, 1997.
3) Methanethiol formation in disrupted tissue solution of fresh broccoli. J. Japan. Soc. Hort. Sci., 66, 621-627, 1997.
4) Effects of pre-storage duration and storage temperatures on the formation of volatile sulfur compounds in broccoli under anaerobic conditions. J. Japan. Soc. Hort. Sci., 67, 544-548,1998.
5) Mechanism of off-flavor production in Brassica vegetables under anaerobic conditions. JARQ,33,109-114,1999.
6) ブロッコリー栽培品種のメタンチオール発生量,S-メチル-L-システインスルホキシ ド含量およびC-Sリアーゼ活性.園学雑,694-696,1999.