積算日射計測フィルムによる果菜類の個葉の積算受光量の評価

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要約

日射による色素の退色現象を利用した積算日射計測フィルムによって推定した積算 日射量は、 全天日射計による測定値とよく一致した。本フィルムを使えば、整枝法による果菜 類の 個葉の積算受光量の違いを、多数かつ同時に簡便に評価できる。

  • キーワード: 積算日射計測フィルム、整枝法、果菜類、個葉の積算受光量
  • 担当:野菜・茶業試験場 施設生産部 栽培システム研究室
  • 連絡先:0569-72-1490
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:栽 培
  • 対象:果菜類
  • 分類:研 究

背景・ねらい

従来の果菜類の整枝法は収量性を重視して考案されてきたが、整枝法と個体の物質生産能力の 関係は必ずしも明確にされていない。整枝による草姿の変化は、個葉の受光量の変化を通じて 果実生産性に影響すると考えられる。そこで、個葉の受光量を簡便に評価する目的で、積算日 射計測 フィルムの適用性を検討する。

成果の内容・特徴

  • 積算日射計測フィルム[簡易積算日射計フィルム(品名:オイルレッドO、大成化工(株)) ]は アゾ色素を含浸させて着色したセルロースアセテートフィルムで、最大吸収波長は521nmであ り、 色素が日射によって退色する程度を簡易光透過率測定器で測り、積算日射量を算出する。
  • 本フィルムの退色速度は高温条件下ほど速いため、日射量の絶対値を求める場合には季節毎に 検量線を作成する必要がある( 図1 )。積算日射量40MJ・m-2程度(目安としては野外の全天日射で 晴天日1~2日,曇天日2~3日)までは、季節によらず全天日射計の測定値と本フィルムの退色 率の間に は非常に高い相関がある( 表1 )。
  • 多数箇所の相対的な積算受光量を簡便に比較するには、全天日射量(空き地に水平に設置した フィルムの受光量)に対する割合(相対受光量)で表示する。
  • 3種類の仕立て法により露地栽培したナスについて、果実近傍に着生する多数の葉にフィルム を 貼り、3日間の積算受光量を測定した( 図2 )。慣行仕立て法では枝葉が密集する畝内側の葉の受光量 が低下するが、垣根仕立て法ではどの位置の葉もほぼ均等な受光量を示すなど、整枝法による 個葉の 受光量の変化を明らかにできた。
  • 地ばい栽培と立体栽培したスイカについて、主枝着生葉にフィルムを貼り、4日間の積算受光 量を 測定した( 図3 )。地ばい栽培ではどの葉も概して均等な受光量を示したが、立体栽培では中段以下の 葉の受光量が明らかに低下した。これは、上位葉や隣接個体により下層部への光透過が遮られ たことを 示している。

成果の活用面・留意点

  • 恒常的な弱光条件下での測定ではフィルムの退色速度が遅く、正確な測定値が得られない場合 がある。
  • 本フィルムによる積算日射量の測定は、他の野菜・花き類へも応用可能である。

具体的データ

図1 積算日射計測フィルムの退色率と積算日射量の関係

表1 積算日射計測フィルム測定月の平均気温と検量線

図2 ナスの仕立て法の違いによる受光量の差異

図3 地ばい栽培及び立体栽培されたスイカの葉位別にみた受光量の差異

その他

  • 研究課題名:果菜類の合理的整枝法の開発
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成10年度(平成9~13年)
  • 研究担当者:渡邉慎一・千野浩二(山梨総合農試)・坂本有加・岡野邦夫
  • 発表論文等:1.Effects of training methodon fruit yield, working efficiency and lightinterception in eggplant (Solanum melongenaL.).園学雑,67(別1),1998.
    2.スイカの地ばいおよび立体栽培における受光態勢および圃場光合成特性.園学雑,67(別2),1998.