茎径肥大速度を目標値とした噴霧耕によるかん水制御

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要約

トマトの茎径の肥大をレーザセンサーで計測し、茎径の肥大速度を指標として噴霧 耕のかん水の フィードバック制御を行うことが可能である。

  • キーワード: 茎径、肥大、噴霧耕、かん水、フィードバック
  • 担当:野菜・茶業試験場 施設生産部 資材利用研究室
  • 連絡先:0569-72-1493
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:環境調節
  • 対象:果菜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

植物の生育を制御する技術は、土壌培地の水分計を用いた制御、日射比例かん水量制御などが あるが、これらのかん水方法は水分の不足分を補償するためのかん水を行うもので、直接に生 長を 制御しているわけではない。ここでは生育制御のひとつとして、茎径の肥大過程の制御を、水 分を 鋭敏に調節できる噴霧耕を用いて行う。

成果の内容・特徴

  • 茎径の計測には、レーザセンサ(分解能2μm)を用い、栽培には植物の水分状態の応答が 速い噴霧耕を用いる( 図1 )。
  • トマト(葉数9枚)の1日の茎径変化は、多かん水(日射1cal/cm2に対して16秒 噴霧)では約0.5mm/日の肥大速度があり、少かん水(同日射当たり8秒)では0.1mm/日であ り( 図2 )、両者には、日中の水分ストレスによる茎径の減少と、1日の生長肥大速度に大きな差があ る。
  • 肥大生長目標(図4の直線)を、一例として0.25mm/日に設定し、肥大速度を指標とした制御 を行う。 図3 の 制御フローに示すように、茎径と設定目標の偏差(e)に応じて1回かん水量を増減するフィー ドバック制御を行う。かん水間隔は12分、過剰なかん水としお れを防止するために1回かん水量の上限(30秒)と下限(3秒)を設定し、偏差が最小にな るようにかん水時間(秒数)を調節する。図4の制御初日 (3/15)にみられるように、曇天日においては肥大が大きく目標を達成できないこともあ るが、晴天日が含まれれば目標値を達成できる。
  • 茎径の肥大速度を目標とした制御は、茎の肥大が順調で硬化するまでであれば、茎の直径と目 標値との偏差だけを指標とするために、植物の水分状態を意識することなく、目標通りのかん 水制御を行うことができる( 図4 )。

成果の活用面・留意点

  • トマトの場合、茎が順調に肥大していくのは10日前後であり、その後は別の位置にセンサを移 動する必要がある。
  • 噴霧耕以外の栽培方法に適用する場合、培地の水分の緩衝能が大きいために、応答が遅く、か ん水方法(予測手法やかん水機器)を別に考慮する必要がある。

具体的データ

図1 噴霧耕による茎径肥大生業

図2 かん水量を変えたときの茎径肥大

図3 かん水ポンプの制御フロー

図4 茎径肥大速度を目標値とした噴霧耕制御

その他

  • 研究課題名:モデリングによる生体情報処理・生育制御システムの開発
  • 予算区分:軽労化農業
  • 研究期間:平成10年度(平成6~10年)
  • 研究担当者:島地英夫・高市益行・東出忠桐
  • 発表論文等:水耕トマトの生体重と茎径の日変化,農業気象・生物環境合同大会,394- 395,1995
    コンピュータ制御の将来展望,平成6年度課題別研究会資料,31-37,1994