被覆塩化カルシウム施用によるハクサイ軟腐病の軽減

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

ハクサイ軟腐病の発病は,培養液カルシウム濃度が高い場合に抑制され,被覆塩化 カルシウムを 施用し,植物体のカルシウム含有率を高めた場合に軽減される。

  • キーワード: ハクサイ軟腐病、カルシウム、被覆塩化カルシウム
  • 担当:野菜・茶業試験場・環境部・土壌肥料研究室
  • 連絡先:059-268-4645
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:肥料
  • 対象:葉茎菜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

ハクサイ軟腐病は重要土壌病害の一つで,高温多湿の条件下で多発し,大きな被害をもたら しているが,これまでに有効な対策技術は確立されておらず,新た な発病軽減技術が求められている。そこで,いくつかの病害で発病軽減効果が認められている カルシウムの施用によるハクサイ軟腐病の軽減技術の確立を目的と する。

成果の内容・特徴

  • カルシウム濃度の異なる培養液を施用し,砂耕ポット栽培した結球開始期のハクサイに対し, 軟腐病菌を付傷接種した場合,軟腐病の病徴進展は,培養液カルシウム濃度が高いほど抑制さ れる( 図1 )。
  • 2種類のカルシウム塩類を樹脂被覆し,溶出を制御した被覆カルシウム資材を定植時に施用し てハクサイを土耕栽培し,結球期に軟腐病菌を接種した場合,軟腐病の発病は、被覆硝酸カル シウムの施用による影響を受けず,被覆塩化カルシウムの施用により軽減される( 図2 )。
  • この場合のハクサイの生育は処理区間で差がない( 図3 )。また,植物体カルシウム含有率は,被覆硝酸カルシウム施用区では高まらず,発病軽減の 認められる被覆塩化カルシウム施用区で高まる( 図4 )。したがって,被覆塩化カルシウム施用によるハクサイのカルシウム吸収の増加が発病軽減 に寄与するものと推測される。

成果の活用面・留意点

  • 野菜生産のための肥料・資材の開発・利用に役立ち,栄養環境制御による発病軽減技術を開発 するための基礎資料となる。
  • 被覆塩化カルシウムは試作品であり,市販されていない。
  • 本成果は単年度の試験結果であり,実用的な技術にするためには,数作にわたる栽培試験での 発病の推移を明らかにする必要がある。

具体的データ

図1 培養液カルシウム濃度がハクサイ軟腐病の病徴進展に及ぼす影響

図2 被覆カルシウム資材施用がハクサイ軟腐病の発病に及ぼす影響

図3 被覆カルシウム資材施用がハクサイの生育に及ぼす影響

図4 被覆カルシウム資材施用がハクサイのカルシウム含有率に及ぼす影響

その他

  • 研究課題名:野菜・花きの栄養環境制御による病害軽減技術の開発およびその機構解明
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成10年度(平成7~11年)
  • 研究担当者:山崎浩道,菊地 直,木村 武
  • 発表論文等:カルシウム施用がハクサイ軟腐病の発病に及ぼす影響,土肥講要集,43,57 ,1997.