低窒素条件におけるトマト生育の品種間差異と窒素同化能

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要約

施肥窒素濃度に対するトマトの生育反応と窒素同化能力には品種間差異があり,慣 行より 低窒素条件下で高い窒素吸収量と乾物量を示す品種では,葉の硝酸還元酵素活性が 高く, 体内に吸収した硝酸態窒素の同化能力が高い。

  • キーワード: トマト、窒素同化能力、品種間差異、低窒素、硝酸還元酵素
  • 担当:野菜・茶業試験場・環境部・土壌肥料研究室
  • 連絡先:059-268-4645
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:肥料
  • 対象:果菜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

肥料の多施用が慣行化している野菜栽培では,窒素等の施肥成分による環境への負荷が懸念 されるため,作物による施肥窒素利用率の向上による低投入型生産技術の開発が必要である。 そこで,低窒素条件におけるトマトの生育特性ならびに窒素利用効率の品種間差異を解明し, 品種の生理特性を活用した低投入生産技術の開発に資する。

成果の内容・特徴

  • トマト苗の生育と窒素吸収量には顕著な品種間差が認められ,低窒素条件でも慣行施肥濃度( 150ppm)と同等の生育を示す品種では,吸収窒素当たりの乾物生産効率が高い( 図1 )。
  • 幼苗期において施肥窒素に対する生育反応が高い'おどりこ'は,生育反応が低い'June Pink'と較べ,生育,窒素吸収量とも高く推移し,幼苗期における性質は生育期間全般にわた って維持される。( 図2 )
  • 植物体乾物重は,未同化窒素を含む全窒素含量よりも同化窒素含量との相関が高く,吸収した 硝酸態窒素の同化能力が乾物生産効率に関与すると推定される( 図3 )。
  • 硝酸同化能力が高い'おどりこ'の葉における硝酸還元酵素活性は,同化能力が低い'June Pink'よりも高く推移し( 図4 ),硝酸還元酵素活性と硝酸態窒素の同化能力との関連性が認められる。

成果の活用面・留意点

  • 低窒素条件で窒素利用効率が良好な品種の存在と,乾物生産効率と硝酸態窒素の同化能との関 連性が示され,品種特性に基づく低投入型生産技術の開発への基礎資料となる。
  • 果実収量・品質に影響を及ぼす硝酸還元以後の同化・転流過程での品種間差異についての検討 が更に必要である。

具体的データ

図1 トマト苗における品種間差異

図2 トマトにおける乾物量と窒素吸収量の推移

図3 トマト乾物重と全窒素・同化窒素の相関

図4 トマト葉中の硝酸還元酵素活性の推移

その他

  • 研究課題名:低養分環境における野菜の生育特性の品種間差異
  • 予算区分:一般別枠(物質循環)
  • 研究期間:平成10年度(平成4~10年)
  • 研究担当者:菊地 直,山崎浩道,木村 武
  • 発表論文等:トマト生育における施肥窒素反応性の品種間差異,土肥講要集,40,111,1994.
    トマトの窒素吸収・同化における施肥窒素反応性の品種間差異,土肥講要集,43,103,1997.