硝酸塩代謝能を欠くFusarium oxysporumの選択培地「Fo-N培地」

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要約

土壌中のF. oxysporum硝酸塩代謝能欠損菌株(nit菌)を選択的に 分離できる「Fo-N培地」を 作出した。希釈平板法で10倍に希釈した土壌懸濁液を試料にしても、培養初期には nit菌のみが大型 コロニーを形成し、識別と再分離が容易である。

  • キーワード: F. oxysporum硝酸塩代謝能欠損菌株(nit菌)、選択的、分離 、Fo-N培地
  • 担当:野菜・茶業試験場・久留米支場・病害虫研究室
  • 連絡先:0942-43-8271
  • [部名]野菜・茶業
  • 専門:作物病害
  • 対象:野菜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

Fusarium oxysporumの硝酸塩代謝能欠損菌株(nit菌)が生態研究に広く使 われるようになったが、 既存の選択培地では10倍希釈の土壌懸濁液からnit菌を分離できず、またサラダナ根腐病では 既存培地の 検出限界以下の病原菌密度で発病する。このためさらに高い分離能を有するnit菌用の選択培 地を作出する。

成果の内容・特徴

  • 土壌中のF. oxysporum硝酸塩代謝能欠損菌株(nit菌)を選択的に分離する CGMBP培地を改良して、Fo-N培地を作出した( 表1 )。
  • 10倍希釈土壌懸濁液を試料にしても、F. oxysporum nit菌が選択的に分離され、識別 と再分離が容易である( 図1 )。色素産生性nit菌のコロニー裏面は赤色を呈する。
  • nit菌の胞子を加えた土壌懸濁液試料を用いた時、nit菌の回収率はほぼ100%である。
  • 同属のF. moniliformeの生育は完全に阻止され、F. solaniは顕著に抑制され る。
  • Trichoderma属菌とMucor属菌の生育は抑制され、Rhizopus属菌はコロニーを形 成するが、生育が抑制される。Penicillium属菌は培養期間が長くなると明瞭なコロニ ーを形成する。

成果の活用面・留意点

  • PCNB水和剤は現在生産されていないので、試薬のPCNBを10μm以下に粉砕し、1~2%のn-ドデシ ルベンゼンスルフォン酸ナトリウムを混合し、カオリンを加えて75%に調製し使用する。
  • 培養中の細菌の繁殖を防ぐため、分注後、無風の暗所に3~4日間置き、培地表面を乾燥させて から使用する。
  • 直径9cmの培地上に0.1%寒天液で希釈した土壌懸濁液0.5mlを拡げ、25°Cで8~14日間培養する 。培養には光を必要としない。
  • サトイモ萎凋病菌、サラダナ根腐病菌及びイチゴ萎黄病菌に対する分離能は確認したが、他の 分化型は未検討である。

具体的データ

表1 Fo-N培地の組成

図1 10倍希釈土壌懸濁液を試料にした時の生育状況

その他

  • 研究課題名:非病原菌によるフザリウム病の生物防除技術の開発
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成10年度(平成8~10年)
  • 研究担当者:西村範夫
  • 発表論文等:Phytopathology 89(6), S56, 1999.