揮発性静菌物質生産糸状菌によるパセリうどんこ病の防除

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要約

未同定糸状菌Kyu-W63菌は、揮発性抗菌物質を生産してパセリうどんこ病菌の胞子 発芽を 抑制するとともに、設施内のパセリうどんこ病の防除にも効果を示す。

  • キーワード: Kyu-W63菌、揮発性抗菌物質、設施、パセリうどんこ病、防除
  • 担当:野菜・茶業試験場・久留米支場・病害虫研究室
  • 連絡先:0942-43-8271
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:作物病害
  • 対象:葉菜類
  • 分類:研 究

背景・ねらい

パセリうどんこ病は登録農薬の少ないことや抵抗性品種がないことから難防除病害となってい る。 コムギうどんこ病の発病を抑える糸状菌Kyu-W63を選抜し、その発病抑制効果が本菌の生産す る 揮発性成分(ペンチルフルアルデヒド)によるものであり、その抗菌スペクトラムが広く、 他の病原糸状菌の生育も抑制することを解明した。そこで、本菌を用いた施設内のパセリうど んこ病の 生物防除法の開発をする。

成果の内容・特徴

  • 素寒天培地上にパセリうどんこ病菌の分生胞子を散布し、上からKyu-W63菌を培養したペトリ 皿を被せたところ、対照としてPDA培地だけのペトリ皿を被せたものに比べて分生胞子の発芽 を顕著に(70%)阻害する( 表1 )。
  • 縦17m、横5.4mのパイプハウスで、Kyu-W63菌処理区ではポリカーボネート製ポット(100×110 ×100mm)に100mlのPDA培地を流し込み、本菌を培養して口をガーゼで覆ったものを1m2当 たり3.1個設置した結果、発病度が半減し( 表2 )、本菌は施設内のパセリうどんこ病の発病を強く抑制する( 図1 )。

成果の活用面・留意点

  • ハウスの換気は慣行栽培同様でよい(昼はハウスを開放し、夜間は閉鎖する)。
  • 本菌の生産する揮発性物質が風により移動し、抑制効果が各区によりばらつきが認められた。 実用化には施用法の改良が必要である。
  • 発病を抑えるためのペンチルフルアルデヒドの有効濃度を明らかにする必要がある。
  • ペンチルフルアルデヒドの安全性について検討する必要がある。

具体的データ

表1 処理がパセリうどんこ病菌胞子の発芽に及ぼす影響

表2 各処理区におけるパセリうどんこ病の発病度の推移

図1 98年5月9日における発病状況

その他

  • 研究課題名:揮発性制御物質生産糸状菌による病害制御技術の開発
  • 予算区分:大型別枠(生態秩序第III期)
  • 研究期間:平成10年度(平成8~10年)
  • 研究担当者:小板橋基夫
  • 発表論文等:揮発性静菌物質生産糸状菌によるパセリうどんこ病の防除
    日本植物病理学会 九州部会 発表(1998)