ナスの単為結果性の遺伝特性

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

欧州より導入したナスの果実が正常に肥大する単為結果性には、不完全優性の1遺 伝子が関与する 。国内品種にみられる「石ナス果」は、導入品種で発生がなく、着果促進に働く遺 伝的特性と判断され る。両タイプの遺伝子の集積により、安定した単為結果性品種の作出が期待できる 。

  • キーワード: ナス、単為結果性、不完全優性、着果促進
  • 担当:野菜・茶業試験場 野菜育種部 ナス科育種研究室
  • 連絡先:059-268-4653
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:育種
  • 対象:果菜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

ナスの施設栽培では、開花しても花粉の発達・飛散が悪いために、落花や果実が小さく硬い 「石ナス果」が発生し易い。そこで、着果安定のためホルモン剤処 理等が行われているが、多大の労力を要するため、着果促進処理を必要としない単為結果性品 種の育成が求められている。育種素材として'Talina'等を 欧州より導入したが、単為結果性の遺伝が明らかでなく、単為結果率も高くなかった。このた め、導入品種の単為結果性について遺伝解析を行うとともに、安定 した単為結果性系統育成の可能性を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 欧州から導入した'Talina'の単為結果性半数体倍加系統'Talina2/1'は果実肥大性に優れ るが、着果率は低い( 表1 、 図1 )。'千両2号'等の国内品種でみられる石ナス果は、欧州品種では発生がなく、肥大性は低 いが着果促進に働く遺伝的特性と判断される。
  • 'Talina2/1'と'なす中間母本農1号'の交雑後代系統について、開花前の除雄処理により 判定した単為結果性は、優性の1遺伝子支配に適合する(表1)。
  • 'Talina'と同じ単為結果性遺伝子をヘテロに有する'Mileda'、'Diva'、'Rondona'は 'Talina2/1'に比べ株当り着果数が半分以下であり、本遺伝子は不完全優性遺伝を示すと推 察される( 図1 )。
  • 'Talina'と'中生真黒'との交配組合せにおいて、'Talina2/1'の約2倍の単為結実果を つけるF5世代系統が得られる( 図1 )。これは、単為結果性に関与する遺伝子の集積により、安定した単為結果性品種育成の可能 性を示唆している。

成果の活用面・留意点

  • 冬期の施設栽培でホルモン剤処理の要らない省力型単為結果性品種の育種に活用できる。
  • 石ナス果の原因となる着果促進型の単為結果性に関与する遺伝子数は未解明である。
  • 単為結果性遺伝子を集積した系統の低温・弱光等の不良環境下における生態的特性は未検討で ある。

具体的データ

表1 Talinaが有する単為結果性の遺伝解析

図1 選抜系統及び単為結果性品種の着果特性

その他

  • 研究課題名:ナスの単為結果性育種(ナスの単為結果性系統の育成)
  • 予算区分:経常(場内プロ)・連携開発(超省力園芸)
  • 研究期間:平成10年度(平成7~16年)
  • 研究担当者:吉田建実・門馬信二・佐藤隆徳・松永 啓
  • 発表論文等:ナスの単為結果性の遺伝特性、園学雑67別2:257、1998