遺伝子組換えによるトレニアの花の寿命の延長

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要約

トレニアに形質転換法によりエチレン生合成系のACC酸化酵素遺伝子を導入する ことで、 エチレン生成を抑制し花の寿命が延長した。本成果は他のエチレン感受性花きの花 持ち性向上のための 育種モデルとなりうる。

  • キーワード: トレニア、形質転換法、エチレン、ACC酸化酵素遺伝子性、花の寿命
  • 担当:野菜・茶業試験場 花き部 育種法研究室
  • 連絡先:059-268-4661
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:バイテク
  • 対象:花き類
  • 分類:研究

背景・ねらい

花きにおいて観賞期間の長さは重要な形質の一つであり、花の寿命の延長は大きな育種目標 である。また、トレニアを含め多くの花きでは植物ホルモンの一種 であるエチレンによって花の寿命が著しく低下することが知られている。そこで、トレニアを 材料とし、遺伝子組換え技術を用いてエチレン生成を抑制すること により花の寿命の延長を試みる。

成果の内容・特徴

  • トレニアの花から単離したACC酸化酵素遺伝子の断片は、アミノ酸レベルで比較すると、トマ ト、ペラルゴニウム、シラカバ及びリョクトウで単離された同遺伝子と約80%の相同性があっ た(データ省略)。
  • 単離したACC酸化酵素遺伝子断片を導入した植物のうち、センス遺伝子を導入した8個体とア ンチセンス遺伝子を導入した3個体が野生型植物よりも有意に長い花の寿命を示した( 表1 )。野生型植物に比べて花の寿命が長くなった遺伝子組換え体は、 結果として同時に咲いて いる1つの花穂あたりの花の数が多くなる( 図1 )。
  • 花の寿命が延長した個体の後代植物のうち、導入遺伝子を有するものは花の寿命が延長した。
  • 組換えトレニアにおいては、ACC酸化酵素遺伝子の mRNA量が低下し( 図2 )、その結果エチレン生成量が低下することで花の寿命が延長する。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、他のエチレン感受性花きの花持ち性向上のための育種モデルとなりうる。
  • 本成果における花の寿命の延長は閉鎖系温室内でのデータである。

具体的データ

表1 トレニア形質転換体における花持ち日数

図1 形質転換体(左)と野生型植物(右)

図2 遺伝子組換え当代植物とその後代のノーザンブロット解析

その他

  • 研究課題名:遺伝子組換えによる長寿命花き育種素材の作出
  • 予算区分:バイテク(植物育種)
  • 研究期間:平成10年度(平成6~9年)
  • 研究担当者:間竜太郎・柴田道夫・吉田隆延(現 東北農試)・市村一雄(流通技術研)・後 藤理恵(流通技術研)
  • 発表論文等:Extension of flower longevity in transgenic torenia plants incorporatingACC oxidase trnasgene、Plant Science、138巻 91-101、1998