チューリップにおける新規アントシアニンの同定

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要約

チューリップの暗紫色系雄蕊のアントシアニンを分析し、 2種の新規デルフィニ ジン系アセチル化アントシアニンを同定した。

  • キーワード: チューリップ、暗紫色、雄蕊、アントシアニン、アセチル化アントシアニン
  • 担当:野菜・茶業試験場 花き部 開花制御研究室
  • 連絡先:059-268-4663
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:生理
  • 対象:花き類
  • 分類:研究

背景・ねらい

チューリップの中には、花の中心部が周りの花弁に比べて目立つ色彩を持っているものがあ る。いくつかの種類のチューリップは、赤い花弁とともに暗紫色系 の花底と雄蕊を有し、中心部を目立たせている。同一の花の中での異なる色彩の発現機構を解 明する一環として、暗紫色系雄蕊の内生アントシアニンの分析を行 う。

成果の内容・特徴

  • 暗紫色系雄蕊を有するチューリップ、‘Ben van Zanten’と‘Ile de France’の雄蕊を5%ぎ 酸で抽出しODS-HPLCで分析したところ、化合物1-3が主要なアントシアニンとして80%以上を占 めていた( 表1 )。数品種の暗紫色系雄蕊を集め、化合物1-3を単離・精製した。
  • 化合物1はODS-HPLCの保持時間、UV-Visスペクトルともに、標品のdelphinidin 3-O-(6-O-(α-rhamnopyranosyl)-β-glucopyranoside)と一致した。化合物1の1H-NMR及び FABMS分析の結果もそれを裏付けた( 表1 、 図1 )。
  • FABMS分析、及び1H-NMR、13C-NMR等を用いた NMR(1H-1H COSY、1H-13C COSY、NOESY、 TOCSY、HMBC)分析の結果、化合物2をdelphinidin 3-O-(6-O-(3-O-acety-α-rhamno- pyranosyl)-β-glucopyranoside)、化合物3をdelphinidin 3-O-(6-O-(2-O-acety-α-rhamnopyranosyl)-β-glucopyranoside)と決定した( 図1 )。これらは何れも新規なアントシアニンである。

成果の活用面・留意点

  • 新規アントシアニンの構造が明らかにされ、これらが暗紫色の発現に関与していることから、 新しい花色をもつチューリップの品種の創成に寄与できる。
  • 同一の花の中での、異なる色彩の発現機構の解明につながる。

具体的データ

表1 雄蕊中のアントシアニンのHPLCの保持時間、UV-Visスペクトルと含有割合

 

図1 チューリップ雄蕊に含まれるアントシアニンの構造

 

その他

  • 研究課題名:アントシアニンの花色発現機構の解明
  • 予算区分 :フロンティア
  • 研究期間 :平成10年度 (平成8~12年)
  • 研究担当者:中山真義・腰岡政二・ 山口雅篤(南九州大学)・浦島修(富山野菜花き試 )
  • 発表論文等:1.チューリップの暗紫色系雄ずいに含まれる新規アセチル化アントシアニン .園学雑, 67(別2), 436, 1998.
    2.Anthocyanins in the dark purple anthers of Tulipagesneriana: Identification of two novel delphinidin 3-O-(6-O-(acetyl-α- rhamnopyranosyl)-β-glucopryanosides).Biosci. Biotech. Biochem., 印刷中