ストックの花芽分化におけるジベレリンの役割

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

ストックにおいては、ジベレリン生合成経路のうち、早期13位水酸化経路および 13位非水酸化経路が機能している。また、花芽分化の制御には活性型ジベレリンが 関与し、 その活性型ジベレリンは13位非水酸化経路上のGA4である。

  • キーワード: ストック、ジベレリン、早期13位水酸化経路、13位非水酸化経路、GA
  • 担当:野菜・茶業試験場 花き部 開花制御研究室
  • 連絡先:059-268-4663
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:生理
  • 対象:花き類
  • 分類:研究

背景・ねらい

ストックの花芽分化にジベレリン(GA)が関与することが推察されている。しかし、その詳細 は明らかでない。そこで、内生ジベレリンの生合成機能の面から花芽分化におけるジベレリン の役割を解析し、その果たす役割を解明する。

成果の内容・特徴

  • ストックの茎葉部および花らい部から、GC-MSにより、内生ジベレリンとして13位が水酸化さ れた5種類、GA1、GA8、GA19、GA20、GA53および13位が水酸化されていない6種類、GA4、3-epi-GA4、GA24、GA34、 GA37、GA112を同定した。これらの存在から、ストックの 茎葉部および花らい部では早期13位水酸化経路および13位非水酸化経路の2経路が主に機能し ていることが示される( 図1 )。
  • ジベレリン生合成阻害剤のウニコナゾール(UCZ)処理で内生ジベレリン濃度を下げることに より、花芽分化は抑制された。その抑制はGA4処理により回復した。( 図2 )
  • 数種GAに対する反応から、花芽分化過程における主な活性型ジベレリンはGA4であることを明らかにし、GA4の生合成に関わる13位非水酸化経路の機 能が重要な役割を担っていることを示した( 図1 , 3 )。活性型ジベレリン(GA4)の不活性化機構である2b位の水酸化を、メチ ル基の2位への導入(2,2-diMe-GA4)あるいはジベレリン生合成阻害剤のプ ロヘキサジオンカルシウム(PCa)により阻害することでGA4の効果が高くな ることから、2b位の水酸化機能が花芽分化に関与している可能性がある( 図1 , 3 )。
  • 活性型ジベレリン(GA4)の不活性化機構である2b位の水酸化を、メチ ル基の2位への導入(2,2-diMe-GA4)あるいはジベレリン生合成阻害剤のプ ロヘキサジオンカルシウム(PCa)により阻害することでGA4の効果が高くなることから、2b位 の水酸化機能が花芽分化に関与している可能性がある( 図1 , 3 )。

成果の活用面・留意点

  • 花芽分化にジベレリンが関与するとされる植物の花芽分化機構の解明のための基礎資料となる 。
  • ジベレリンおよび関連化合物によるストックの新しい開花調節技術開発につながる。

具体的データ

図1 ストックの茎葉および花らい部におけるジベレリン生合成経路

 

図2 花芽分化に及ぼすUCZおよびGA4の影響

 

図3 花芽分化に及ぼす数種GAおよび関連化合物の影響

 

その他

  • 研究課題名:休眠性、ロゼット性花き類の花芽形成における生理活性物質の相互作用の解 明
  • 予算区分:特研[園芸作物]
  • 研究期間平成10年度 (平成7~10年)
  • 研究担当者:久松 完、腰岡政二、Lewis N. Mander (オーストラリア国立大)
  • 発表論文等:1.Isolation and Identification of GA112 (12b-hydroxy GA12)in Matthiola incana. Phytochemistry 47:3-6, 1998.
                        2. Effect of Gibberellin A4 and GA Biosynthesis Inhibitors on Growth and Flowering of Stock [Matthiola incana (L.)R. Br.]. J. Japan. Soc. Hort. Sci. 67: 537-543,1998.
                         3.The Role of Gibberellin Biosynthesis in the control of growth and flowering in Matthiola incana (L.)R. Br. Physiol.Plant.投稿中,1999