モモ未熟種子におけるジベレリンの同定と新物質の発見

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要約

モモの未熟種子における内生ジベレリンを分析し、14種類を同定した。そのなか で4種は新物質であり、それぞれGA118、GA119、GA120、GA121と命名した。

    • キーワード: モモ、未熟種子、内生ジベレリン、GA118、GA119、GA120、GA121

  • 担当:野菜・茶業試験場 花き部 開花制御研究室
  • 連絡先:059-268-4663
  • 部会名:野菜・茶業、果樹
  • 専門:生理
  • 対象:花き類、果樹類
  • 分類:研究

背景・ねらい

ジベレリンは多くの植物において、生育・開花制御に関与していると考えられている。中で もジベレリンA3(GA3)は、C1, 2位二重結合とC3β位水酸基を有する、最も活性の高いジベレリンである。Prunus属植物の未 熟種子にはGA3が内生ジベレリンとして存在することが知られている。そこでモモの開花現象 解明の一環として、未熟種子におけるGA3の存在とその生成過程を知るため に、内生ジベレリンを分析する。

成果の内容・特徴

      モモの未熟種子(開花40日後)をメタノールで抽出し、 ODS-HPLC等で精製した後、メチ ルエステル-トリメチルシリルエーテル誘導体としてGC-MSで分析を行った。
    • モモの未熟種子の内生ジベレリンとしてGA3を初めて同定したほか、GA9、GA17、GA19、GA30、 GA44、GA53、GA63、GA95、GA97、1α-hydroxy GA20、1α-hydroxy GA9、1, 2-dehydroGA9、1, 2-dehydro GA70 を同定した( 図 )。

  • 1α-hydroxy GA20、1α-hydroxy GA9、1, 2-dehydro GA9、1, 2-dehydro GA70 は新規ジベレリンで あり、それぞれ GA118、GA119、GA120、GA121 と命名した。
  • GA3と同様にC1, 2位に二重結合を有するGA30、GA95、GA120、GA121が検出された。

成果の活用面・留意点

    • 未熟種子における内生ジベレリンの理解が進んだことで、ジベレリンの発現機構と種 子成熟 、種子発芽との関連を解明するための手がかりが得られる。
    • 高い活性を有するGA3の生合成の研究と、その制御技術の開発につながる。

具体的データ

図 モモの未熟種子から同定されたジベレリン類

その他

    • 研究課題:名花きの生育における内生ジベレリンの役割
    • 予算区分:経常
    • 研究期間:平成10年度 (平成6~12年)
    • 研究担当者:中山真義・腰岡政二・横田孝雄(帝京大学)・Lewis N. Mander(オースト ラリア国立大)
    • 発表論文等:GA95 is a genuin precursor of GA3 in immature seed of Prunus persica L.
      16th IPGSA (Suppl.), 146, 1998.