熱画像による茶園と茶樹の診断

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要約

熱画像測定装置で日中に茶園の表面温度分布を測定すると、衰弱した茶樹は表面温 度が高い特徴が あり、正常な茶樹と判別できる。茶園熱画像から、干ばつ被害、土壌条件の不良、 不適切な栽培管理、 茶園の微気象的な立地などを検出できる。

  • キーワード: 熱画像測定装置、茶園、温度分布、干ばつ、茶園の微気象
  • 担当:野菜・茶業試験場 茶栽培部 生理遺伝研究室
  • 連絡先:0547ー45ー4480
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:栽培
  • 対象:茶
  • 分類:研 究

背景・ねらい

高温・干ばつなどの異常気象や過剰な施肥をはじめとする不適切な茶園管理で衰弱して、蒸散 機能が低下した茶樹や茶園を隔測的に検出する目的で、熱画像測定装置の適用性について、静 岡県牧ノ原周辺の茶園で検討する。また、降霜時の微気象への応用も調べる。

成果の内容・特徴

  • 茶園の干ばつ被害甚大部分(1994・95年に発生)は、干ばつ終息後3年目(1998)の秋には、 熱画像からみて周囲と差が認められなくなる( 図1 、1997年の状態)。
  • 地下水位が高く湿害を受けていると推定される茶園では、障害の著しい部位で茶園表面温度が 高く、秋芽の伸長も温度が高かった部位でより遅れる( 図2 )。
  • 事前調査なしで斜面茶園地帯の熱画像を測定し、異常な表面温度が検出された茶園を調査した ところ、基盤礫層が表層に出現する不良茶園であった。このことから、熱画像情報は不良茶園 の隔測的な識別に有効であることが確認される( 図3 )。
  • 熱画像測定装置の降霜時茶園温度測定への適用性を検討し、防霜ファンの効果評価や、局所的 な温度分布などの茶園微気象観測に大きな効果を有することを確めた( 図4 )。

成果の活用面・留意点

  • 熱画像情報の機種依存性:機種によって得られる熱画像の温度検出精度・解像度に大差がある 。また、機器の操作性や安定性・耐久性、データ処理機能にかなり 機種間格差があり、実際の使用環境で試験的に運用して必要なデータが得られる装置を選定す ることが肝要である。液体窒素冷却型の方が、機動性に優れる場合 がある。
  • 画像取得上の注意点:広い範囲の茶園の画像を撮るためには撮影範囲に応じた眺望の利く場所 が必要であるため、どの茶園でも熱画像が得られるわけではない。 また、撮影は天候条件に左右され、夏期では10~20分以上の晴れ間が必要である。また、茶畝 の方位や傾斜角度、雲の通過などで偽像が発生する場合がある ので注意を必要とする。
  • 障害発生要因の確定調査:熱画像の変化をもたらす障害の発生原因を熱画像データだけから特 定するのは困難で、障害原因の特定のためには、別途調査が不可欠である。

具体的データ

図 熱画像

注1)使用した熱画像測定装置は、図1~3ではNEC三栄製のサーモトレーサーTH1100 (液体窒素冷却型)、図4では、日本電子製サーモビュアーJTG6300(スターリング クーラー冷却式)である。
注2)ここに掲載した熱画像は複写画像のため不明瞭であるが、測定で得られた原カラー 画像は、野菜・茶業試験場茶栽培部生理遺伝研究室ホームページに掲載準備中 (http://green.tea.affrc.go.jp/PG/test.html、一部は既公表)である。

その他

  • 研究課題名 :チャにおける樹体窒素レベルの計測・評価手法の開発
    -熱画像による根系機能の評価手法の開発-
  • 予 算 区 分:場内プロ(根の生理機能)・経常
  • 研 究 期 間:平成10年度(平成8年~10年)
  • 担当:研究 担当者:松尾喜義
  • 研 究 協 力:作業技術研究室、施設生産部、静岡県茶試
  • 発表論文等 :熱画像による茶樹の活力評価の可能性について
    日本農業気象学会1998年度全国大会講演要旨集、1998
    南北うね茶園において茶株面の東側が凍霜害を受けやすい原因
    日本農業気象学会1998年度全国大会講演要旨集、1998