茶生葉中のγ-アミノ酪酸(GABA)含量の新しい増加手法

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要約

茶生葉の嫌気処理と好気処理を繰り返すことにより茶葉中のγ-アミノ酪酸(GABA) 含量は大幅に 増加する。この葉を用いて製造したギャバロン茶は、従来の嫌気処理のみで製造し た茶と比較して、 GABA含量は格段に高い。

  • キーワード: 嫌気処理、好気処理、γ-アミノ酪酸(GABA)、ギャバロン茶
  • 担当:野菜・茶業試験場・茶利用加工部・製茶システム研究室
  • 連絡先:0547-45-4950
  • 部会名:野菜・茶業 食品
  • 専門:加工利用
  • 対象:茶
  • 分類:普及

背景・ねらい

嫌気処理した茶葉から製造した茶は、血圧降下作用のあるγ-アミノ酪酸(GABA)を多く含み 、ギャバロン茶として市販されている。GABAは、嫌気条 件下で、グルタミン酸脱炭酸酵素の働きにより、グルタミン酸から生じるため、単に嫌気処理 を行うだけでは、グルタミン酸がすべて変化した時点で、GABA の増加は頭打ちとなる。そこで、嫌気処理後に好気処理を行うことで、グルタミン酸の回復を はかり、続く嫌気処理によってGABAのさらなる増加を試みる。

成果の内容・特徴

  • 通常の嫌気処理では、GABA含量は嫌気処理後3時間までに顕著に増加し、あとの増加率は低い 。嫌気処理3時間後に好気処理に転じると、グルタミン酸の急 激な回復が起こる。そこで再び嫌気処理に戻して3時間行うと、増加していたグルタミン酸は GABAに変化し、GABA増加量は、嫌気処理のみの方法と比較 して、1.5倍強になる( 図1 )。
  • 好気処理の時間は、GABAの減少が少ない1時間程度が適当である( 図1 )。
  • 嫌気処理で増加するアラニンは好気条件下における減少が著しく、嫌気処理のみの場合よりも 増えることはない。アスパラギン酸は嫌気処理で減少するが、好気条件下での回復は僅少であ る( 図1 )。
  • 嫌気処理と好気処理を複数回繰り返していくと、好気処理のたびにグルタミン酸含量は回復を 示し、その後の嫌気処理でGABAは増加し続ける( 図2 )。
  • 嫌気処理と好気処理を繰り返した茶葉を用いて製茶すると、GABA含量が格段に高い茶となるが 、葉よりも茎にGABA含量は高い( 表1 )。よってこの茶は茎を除かずに仕上げを行う。

成果の活用面・留意点

  • GABAを高含有するギャバロン茶の新製法であり、一番茶以外でも充分活用できる。
  • 茶葉の変質を防ぐため、10°C程度の冷蔵庫内での処理が推奨される。室温での処理は気温に応 じて好気処理を1、2回はさむ程度にとどめる。

具体的データ

図1 嫌気及び好気条件下におけるアミノ酸含量の変化(一番茶)

図2 嫌気及び好気条件下におけるアミノ酸含量の変化(三番茶)

表1 ギャバロン茶のγーアミノ酸含量

その他

  • 研究課題名:茶葉におけるGABAの高位生産技術の開発
  • 予算区分:一般別枠[健康機能]
  • 研究期間:平成10年度(平成8~10年)
  • 研究担当者:澤井祐典・吉冨 均
  • 発表論文等:茶葉におけるγ-アミノ酪酸の高位生産技術の開発,茶業研究報告,85(別 冊),1997.
    嫌気処理と好気処理を繰り返す製法によりγ-アミノ酪酸含量を大幅に高めた茶の製造,茶業研究報告,87(別冊),1998.
    γ-アミノ酪酸含量の高い茶の製造法;特願平9-311609.