抗アレルギー評価系に必要なヒトIgE抗体の産生誘導法

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要約

食品成分の抗アレルギー性評価に必要なアレルゲン特異的IgE抗体をヒト末梢血リンパ球から 効率的に産生誘導する方法を確立した。この方法で活性化したリンパ球を細胞融合することによって、 ヒト型IgEモノクローナル抗体が取得できる。

  • キーワード: 食品成分、抗アレルギー性評価、アレルゲン特異的IgE抗体、ヒト型IgEモノクローナル抗体
  • 担当:野菜・茶業試験場 茶利用加工部 製品開発研究室
  • 連絡先:0547-45-4964
  • 部会名:野菜・茶業、食品
  • 専門:製品開発
  • 対象:茶
  • 分類:研究

背景・ねらい

茶を含む種々の食品の抗アレルギー性評価法の一つとして、ヒト免疫担当細胞株を用いた検定 系 の確立を目指している。アレルギーはアレルゲンと呼ばれる抗原とIgE抗体が引き金となって 生じる。 したがって、この抗アレルギー性評価検定系では、アレルゲン特異的なヒト型IgE抗体が必要 不可欠と 考えられる。しかしながら、体内、体外を問わず、リンパ球から産生されるIgE抗体は微量で あり、 研究に使用可能な量を取得することが困難である。そこで、ヒト末梢血リンパ球を用いて、効 率的な ヒトIgE抗体の産生誘導を試みる。

成果の内容・特徴

  • 血中から分離したヒト末梢血リンパ球を、ダニ(Dermatophagoides Farinae)抽出物抗原(Mite-Df)と免疫活性化剤であるムラミルジペプチド(MDP)、インターロイ キン(IL)-2、4、6を組み合わせて 含む培地で培養すると、4種すべてを組み合わせた場合に100ng/ml程度のIgEの産生誘導が可 能である( 表1 )。
  • 産生誘導されるIgE抗体は、活性化に用いたMite-Df(ダニ抗原)に対して反応する。また、こ のアレルゲン特異的IgE抗体の他にも、IgMや IgG型抗体が本法により産生誘導され、いずれの抗体も対照であるヒト血清由来抗体に比較し て、抗原であるダニ抽出物とよく反応する( 図1 )。
  • IgEを産生する活性化ヒト末梢血リンパ球とヒト融合パートナー細胞株であるICLU-B細胞とを 融合し、IgE産生細胞の株化を行うと、効率よくIgE 産生ヒト融合細胞株が取得可能である。一方で、活性化していないリンパ球を用いた細胞融合 では、IgE産生細胞株は全く取得できない( 表2 )。
  • ヒト融合細胞株の培養上清を用いて、抗原であるダニ抽出物との反応性を検討すると、ダニ抽 出物と反応し、それ以外の抗原とは反応しないヒト型IgEモノクローナル抗体産生融合細胞株 (3E7)が取得可能である( 図2 )。

成果の活用面・留意点

  • IgE抗体産生細胞は、IgMやIgG産生細胞に比較してその抗体産生量が5分の1程度と低く、さ らに、その分泌は不安定である。したがって、定期的な培地交換や一定の細胞密度の維持に努 める必要がある。

具体的データ

表1 種々の免役賦活剤がリンパ球のlgE産生に及ぼす影響

図1 活性化リンパ球の産生する培養上清中の抗体の反応性

表2 細胞融合の結果とlgE産生株の取得効率

図2 取得されたヒト型lgEモノクローナル抗体(3E7)の抗原との反応性

その他

  • 研究課題名:ヒトアレルギー関与細胞株の樹立とその細胞機能の解析
  • 予算区分 : 生研機構
  • 研究期間 : 平成10年度(平成8年~12年)
  • 研究担当者:山本(前田) 万里・川原 浩治(生研機構)・辻 顕光
  • 担当:発表論文等:1)ヒト免疫担当細胞の株化のためのヒト細胞融合用親細胞株ICLU-B 、-T、-E の樹立.
    日本農芸化学会,1998年大会,1998.
    2)New human fusion partners, ICLU-B, -T, -E for making human hybridomas derived from various immunological cells. 6th HAH international conference (Washington DC, USA), 1998.
    3)ダニ抗原特異的ヒト型IgE抗体取得のためのヒトリンパ球の体外活性化法.
    日本免疫学会総会,第28回大会,1998.