青枯病強度抵抗性の生食用大玉トマトの中間母本候補'とまと中間母本農9号'

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要約

'とまと中間母本農9号'は青枯病に対して台木用品種'LS89 'と同等ないしやや劣る強度抵抗性を有し、果色が桃色、果重が160~200gの生食 用大玉トマトである。本中間母本はトマトの青枯病抵抗性品種育成の育種素材と して利用できる。

  • キーワード:とまと中間母本農9号、青枯病、生食用大玉トマト、中間母本
  • 担当:野菜・茶業試験場 野菜育種部 ナス科育種研究室
  • 連絡先:059-268-4653
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:育種
  • 対象:果菜類
  • 分類:普及

背景・ねらい

青枯病はトマト栽培において最も重要な土壌伝染性病害の1つであり、実用的な生食用品 種に十分な抵抗性を有するものが無いために、抵抗性台木を用い た接ぎ木栽培が行われている。しかしながら、接ぎ木栽培では、台木の育苗、接ぎ木作業、接 ぎ木後の順化等に多大な労力を要していること、接ぎ木個体の穂木 部が発病する場合があることから、生食用の青枯病抵抗性品種の育成が望まれている。トマト の青枯病抵抗性素材としては'LS89'、'金剛'などが育成さ れているが、いずれも果実が小さく、生食用品種の育種素材として不十分であった。そこで果 実が大きく青枯病に強度抵抗性の中間母本を育成する。

成果の内容・特徴

  • 育成経過 昭和60年に'金剛'と'FV(12)-2-13-1-1-1'とを交雑し、青枯病抵抗性について F4世代まで選抜を続けた。F4世代の'TBwf04D-3-11'に大果で青枯病 に中程度の抵抗性を有する'LS1811-2'を交雑し、抵抗性と果実形質について選抜を続け、平 成8年にF7世代で、当初の目的にほぼかなった系統を得た。本系統は'トマト安濃 6号'の系統名で平成9~11年にわたり特性検定試験を実施した結果、青枯病抵抗性素材とし ての優秀性が認められたので、中間母本登録を行う。
  • 青枯病抵抗性は市販の生食用品種や主要な台木用品種の'影武者'よりも強く、青 枯病強度抵抗性の台木用品種'LS89'と同等ないしやや劣る (表1) 。
  • り病性品種とのF1は両親の中間値よりも弱い抵抗性を示し、その F2世代では'とまと中間母本農9号'と同等の抵抗性個体の出現が認められる (表2) 。抵抗性は比較的少数の複数遺伝子支配である。なお、抵抗性と果実の大きさ、色、形、果実 の揃い等の主要な一般形質との間に連鎖は認められない。
  • 果色は桃色で、やや偏球形、平均果重は160~200gであり、生食用大玉品種としての 要件を備えている。 (表3) 。 図1

成果の活用面・留意点

  • 青枯病強度抵抗性育種素材として、トマトの抵抗性品種の育成に利用できる。
  • 代表的なF1品種に比べ糖度がやや低く、果実が軟らかい。また、奇形果 の発生が多いなどの欠点を有するため、組み合わせる相手に留意する。
  • 萎ちょう病(レース1)に抵抗性であるが、半身萎ちょう病、根腐萎ちょう病、TMV に対してはり病性である。

具体的データ

表1 青枯病抵抗性検定結果

表2 'とまと中間母本農9号'の青枯病抵抗性の遺伝解析

表3 'とまと中間母本農9号'の果実特性

図1 'とまと中間母本農9号'の系統図

その他

  • 研究課題名:トマト青枯病抵抗性育種
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成11年度(昭和56~平成17年)
  • 研究担当者:門馬信二・吉田建実・松永 啓・佐藤隆徳・成河智明・坂田好輝・飛騨健一
  • 発表論文等:なし