施与した液肥を全量吸収させる鉢物花き、苗物の底面給水栽培法

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要約

施与した液肥の全量を吸収させる完全閉鎖式プール式底面 給水栽培法を開発した。この方法は、施肥による安定した生育制御が行えるだけでなく、 肥料の排出が無い。

  • キーワード: 完全閉鎖式、プール式、底面給水栽培法、排出
  • 担当:野菜・茶業試験場 久留米支場 花き研究室
  • 連絡先:0942-43-8271
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:栽培
  • 対象:花き類
  • 分類:指導

背景・ねらい

鉢花生産で多量に発生する養分の流亡は無駄であり、かつ流亡した養分は環境に負荷を与える 。プ-ル内の鉢数に各鉢が必要とする灌水量を乗じれば注入水量が 正確に算出でき、過不足なく吸水させることができる。また、施与液肥濃度の調節で鉢花の生 育に必要な養分の絶対量が制御でき、流出や肥効遅延が無い安定し た施肥体系が確立できる。そこで、環境保全や低コスト生産に有効と思われる上記底面給水方 法の可能性について検討する。

成果の内容・特徴

  • プールは以下のように設置する。必要灌水量が100mlの鉢(9cm鉢想定)を100鉢/m2で配置 した場合、1回の灌水量は10mmとなるので、 プールの深さは安全性を見込んで2cmとする。プールのわずかな高低差による水の分布のバラ ツキは、0.15mm程度の薄い毛管シート(ラブシート)を敷 くことで調整する。
  • 鉢花の吸肥特性に応じた日当たりの施肥量の設定によって、鉢内養分濃度が制御で き (図1) 、生育制御が容易に行える (図2) 。数回分の養分量をまとめて施与することもできるが、1回の施与量が多くなると、生育制御 が困難になる種類もある(データ省略)。
  • 長期間栽培する観葉植物などでCaやCl、SO4-S等の不要養分 が蓄積する場合は、Kを増加しCl、SO4を減らした改良液肥の組成で調合すれば、 不要養分の蓄積が減少し、生育も良好となる (図3、 (図4) 。
  • 鉢花類、観葉植物類、花壇苗等の苗物、クルメツツジ、セル成型苗について、本法 の有効性を確認している。

成果の活用面・留意点

  • プールの設置に当たっては5mm程度の灌水でラブシートが全面濡れる程度の水平レベルが 必要である。
  • 定流量弁とタイマーなどを使った自動化、積算日射量をファクターとする灌水時期 や灌水量のコンピュータ制御等を試験済みである。

具体的データ

図1 日当たり窒素施肥量の違いが鉢内容液中の硝酸態窒素濃度変化に及ぼす

図2 日当たりの施肥量がシクラメンの生育と品質に及ぼす影響

図3 液肥組成の改良による養分蓄積の違い

図4 施肥の種類と日当たり窒素施肥量

その他

  • 研究課題名:施与した液肥の全量を吸収させる底面給水技術の開発
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成11年度(平成9年~11年)
  • 研究担当者:須藤憲一
  • 発表論文等:
    1.施与した液肥を全量吸水させる底面給水法の検討.園学雑65別2.1996
    2.施与した液肥を全量吸水させる底面給水法でのスパティフィラムの栽培.園学雑66別2.1997
    3.施与した液肥の全量を吸収させる底面給水栽培におけるシクラメンの生育.園学雑68別 2.1999
    4.施与した液肥を全量吸水させる底面給水法-鉢花を例として.施設と園芸NO. 105.1999