石灰窒素利用による茶園の窒素施肥量の削減

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要約

通常の肥料を使って窒素施肥量を40kg/10a/年に削減した場合、吸収根 の再生等により、茶の生葉収量および全窒素含量は確保される。硝酸化成抑制作用 の強い石灰窒素を使用することによってさらに施肥量の削減が可能である。

  • キーワード: 窒素施肥量、吸収根の再生、硝酸化成抑制作用、石灰窒素
  • 担当:野菜・茶業試験場 茶栽培部 土壌肥料研究室
  • 連絡先:0547-45-4924
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:土壌
  • 対象:茶
  • 分類:指導

背景・ねらい

茶園より溶脱した施肥窒素による茶園周辺水系の硝酸性窒素汚染が問題になっており、窒素施 肥量を大幅に削減することが求められている。多くの茶園、とくに粘土質の茶園では多肥によ って吸収根の消失や変色による吸収活性の低下が見られる。 施肥量の削減に当たっては、まず吸収率の向上が重要であり、吸収根の再生と活性維持が必要 である。そこで、窒素の流亡抑制と吸収根の確保を目的とし、石灰窒素を利用した窒素施肥削 減技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 窒素施肥量を年間40kg/10aに削減しても一番茶と二番茶(品種:やぶきた)の収量 (図1) およびそれらの全窒素含量 (図2) は、慣行多肥区に比べ3年間同等である。
  • 窒素施肥量110kg/10a区(慣行多肥)では十分な吸収根の再生は期待できないが、施 肥量の削減により再生させることができる (図3) 。
  • 赤黄色土(畝間:CL、原土:HC)茶園での年間窒素施肥量40kg/10a区において、土 壌中無機窒素に占めるアンモニア態窒素の割合は石灰窒素加用区(石窒40: 石灰窒素の使用量は窒素にして春8kg、秋4kgの計12kg)で、無加用区(慣行減肥)より高く、 石窒40区の無機態窒素含量は平均10mg/100g程度多く推移する (図4) 。このことは石灰窒素の利用により肥料窒素が年間7kg程度多く残存すること、そして30kg台 の施肥量が可能であることを意味する。

成果の活用面・留意点

  • 石灰窒素の使用においては、土壌pHの上昇を招くので土壌診断に基づいて石灰窒素及び石 灰資材の施用量を調節する。
  • 圃場条件、土壌の性質等によって結果が異なる可能性がある。
  • 茶園の窒素の持ち出し量は多くても年間22kg程度であるので、硝酸態窒素に対する 環境基準、さらにはOECDの協議内容等も考慮し、年間窒素20~30kg台の施肥量試験が必要であ る。

具体的データ

図1 生葉収量(慣行多肥区を100とした指数)

図2 生葉の全窒素含量

図3 畝間における吸収根の再生

図4 土壌中の無機窒素含量とそれに占めるアンモニア態窒素の割合の推移

その他

  • 研究課題名:硝酸化成抑制剤の有効利用技術の開発
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成11年度(平成8~11年)
  • 研究担当者:加藤忠司・徳田進一・渡部育夫
  • 発表論文等:
    1.石灰窒素及びジシアンジアミド施用茶園における無機態窒素の動態. 茶研報, 84(別), 134~135, 1996,
    石灰窒素を使った茶園の施肥量削減. 土肥学会中部支部講要, 3, 1998.