半数体倍加系統の作出が容易なハクサイおよびキャベツ品種

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要約

ハクサイおよびキャベツ小胞子(未成熟花粉)からの植 物体再生能が高く、半数体倍加(DH)系統の作出が容易な品種をみいだした。これら 植物体再生能が高い品種と低い品種との雑種第一代(F1)においても小胞子からの植物体再生能は高い。

  • キーワード:ハクサイ、キャベツ、小胞子、半数体倍加(DH)系統、植物体再性能
  • 担当:野菜・茶業試験場 野菜育種部 アブラナ科育種研究室
  • 連絡先:059-268-4654
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:バイテク
  • 対象:葉茎菜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

アブラナ科野菜の大部分は他殖性で自殖弱勢を示すことから、遺伝的に固定した系統を作出す るのは困難な状況にある。一方、小胞子培養により半数体植物を作 出し、そのゲノムを倍加することで遺伝的に固定した系統を短期間に得ることができ、これら は実際育種、遺伝学などで有用な材料となる。しかし、小胞子から の植物体再生、その染色体倍加頻度などの効率が遺伝子型の影響を受け、多くの品種ではこれ らの効率が低いことがその利用を困難にしている。そこで、効率的 に半数体倍加(DH)系統を作出しうる品種の検索および後代での植物体再生能の調査を行い、 本技術の適応を容易にすることを目的とする。

成果の内容・特徴

  • ハクサイでは台湾から導入した南方型品種の‘Homei’、キャベツでは市販の F1品種‘松波’で、小胞子からの植物体再生能が高い (図1) 。
  • 小胞子からの植物体再生能の高い系統と低い系統とのF1は、ほとんどの 組合せで小胞子からの植物体再生能が高い (図2) 。このため、これらのF1小胞子由来DH系統を多数作出し、これらから希望する遺 伝子型を持つDH系統を得る可能性が高い。
  • ハクサイ‘Homei’およびキャベツ‘松波’の小胞子由来再分化植物において、その 8割程度で2倍体(DH)が得られる (表1 , 図3) 。

成果の活用面・留意点

  • アブラナ科野菜のDH系統の作出が可能となり、遺伝様式の解明、QTL解析などに有用な材 料になる。
  • 小胞子からの植物体再生能が低い品種においても、高い品種との雑種第一代ではDH 系統の作出が容易であり、DH系統の利用場面が広くなる。
  • 小胞子からの胚様体形成能、胚様体からの植物体再生能、再分化植物の自然倍加頻 度などに関与する遺伝子の解明が残されている。

具体的データ

図1 小胞子培養における植物体再生数の品種間差異

図2 F1およびその両親の小胞子培養における植物体再生数

表1 小胞子から細分化した植物体の染色体数及び種子稔性

図3 キャベツ’松波’小胞子由来細分化植物の染色体数

その他

  • 研究課題名:アブラナ科野菜の高再分化能系統の作出
  • 予算区分 :経常:バイテク(バイテク育種)
  • 研究期間 :平成12年度(平成2~15年)
  • 研究担当者:釘貫靖久・中村幸司(アサヒ農園(株))・増田寛之((株)増田採種場)・高畑義 人(岩手大学)
  • 発表論文:1. Varietal differences in embryogenic and regenerative ability in microspore culture of Chinese cabbage (Brassica rapa L. ssp. pekinensis ), Breed. Sci. 47, 341-346, 1997. 2. Highly Regenerative Cultivars in Microspore Culture in Brassica oleracea L. var. capitata, Breed. Sci., 49, 251-256, 1999.