パーティクルガンによるサトイモの形質転換系の確立

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要約

サトイモ品種'エグイモ'において、パーティクルガンを利用した 形質転換系を開発した。本転換系では、茎頂組織由来の培養細胞にDNAを付着させた微小金粒子を撃ち込み、ハイグロマイシン添加培地で転換体の選抜・再分化を図る。

  • キーワード:サトイモ、パーティクルガン、形質転換系
  • 担当:野菜・茶業試験場 野菜育種部 種苗工学研究室
  • 連絡先:059-268-4655
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:バイテク
  • 対象:根葉類
  • 分類:研究

背景・ねらい

サトイモは栄養繁殖性であり、我が国の自然条件下では通常開花しないため交雑育種はほとん ど行われていない。また、Agrobacterium による形質転換は困難である。そこで、パ ーティクルガンによるサトイモの形質転換系を開発する。

成果の内容・特徴

  • サトイモ品種'エグイモ'の茎頂組織から誘導されたカルスを振盪培養により増殖し,細 断して滅菌ろ紙上に均一に広げ、遺伝子導入に供する。
  • 遺伝子導入にはパーティクルガン(BIORAD PDS 1000/He)を用い、ラプチャーディスクは1100psi(7.58MPa)、Target distance(ストッピングスクリーンから試料までの距離)は9cmとする。撃ち込みにはpREXに ハイグロマイシン耐性遺伝子(HPT)と導入目的 遺伝子を組み込んだプラスミドDNA (図2) をコーティングした1.6μmの金粒子を用いる。
  • カルスは遺伝子導入2日後にハイグロマイシンを含む選抜培地に移し、約1ヶ月後に 生長してきた緑色カルスをホルモンフリー培地に移して再分化させる (図3) 。
  • 再分化植物体は、PCR法及びサザン法により導入遺伝子の確認を行う (図4) 。
  • この方法により、これまでにb-グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子及びサトイモモザイ クウイルス(DMV)外被タンパク質(CP)遺伝子を導入した再分化植物が得られている。 (図1) 。

成果の活用面・留意点

  • 交雑による品種改良が困難なサトイモの育種に利用できる。
  • 遺伝子導入効率はあまり高くないため(シャーレ当たりblue spot数 20~200),育種 目的には多数のカルスに処理する必要がある。

具体的データ

図2 遺伝子導入に用いたプラスミド

図3 サトイモ形質転換体

図4 PCR法による導入遺伝子の確認

図1 サトイモ形質転換の手順

その他

  • 研究課題名:ウイルス病抵抗性サトイモの作出
  • 予算区分 :バイテク(バイテク育種)
  • 研究期間 :平成11年度(平成6~9年)
  • 研究担当者:吹野(伊藤)伸子・榎本末男・花田 薫(九州農試)
  • 発表論文等:
    1.パーティクルガンによるサトイモモザイクウイルス(DMV)外被タン パク質(CP) 遺伝子のサトイモへの導入.育雑,47(別2)88,1997
    2.パーティクルガンによるサトイモの形質転換.第15回日本植物細胞分子生物学会大 会 ・シンポジウム講演要旨144,1997