デルフィニウム切り花におけるマンニトールの同定とその生理的役割

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要約

マンニトールデルフィニウムの主要な構成糖質の一つで あることを明らかにした。切り花へのマンニトール処理はグルコース処理と同 様に、エチレンに対する感受性を低下させて、落花を抑制する。

  • キーワード: マンニトール、デルフィニウム、構成糖質、切り花、グルコース、 エチレン、落花
  • 担当:野菜・茶業試験場 花き部 流通技術研究室
  • 連絡先:059-268-4664
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:生理
  • 対象:花き類
  • 分類:研究

背景・ねらい

切り花において、糖質の添加は品質保持に効果があるため、糖質の役割を明らかにすることは 重要となっている。デルフィニウムは近年生産の増加が著しい切り 花花きであるが、その糖代謝についてはほとんど研究されていない。そこで、デルフィニウム 切り花に含まれる糖質を同定し、その生理的役割を検討する。

成果の内容・特徴

  • 高速液体クロマトグラフィーによりデルフィニウム花器の糖を分析したところ、グルコー ス、フルクトース、スクロース以外のピークが検出されたので、この物質を単離し、 1H-NMRによりマンニトールと同定した。
  • マンニトールはデルフィニウム切り花のどの部位においても高濃度で存在し、主要 な観賞器官であるがく片で最も多量に含まれる糖質である (表1) 。
  • 小花へのマンニトールの連続処理は代謝糖であるグルコースの連続処理と同様に、 落花を著しく遅延させるが、非代謝糖である3-o-メチルグルコース(3-OMG)では遅延 効果を示さない (表2) 。
  • マンニトール処理は小花のグルコース等の代謝糖濃度を上昇させることにより(デ ータ省略)、エチレン感受性を低下させる (表3) とともに、エチレン生成量を減少させ (図1) 、落花を遅延させると推定される。

成果の活用面・留意点

  • デルフィニウム切り花の品質保持技術の確立に利用できる。
  • 糖質処理がエチレン感受性を低下させたことから、糖質を利用したエチレン感受性 切り花の品質保持技術開発に有用な情報となる。

具体的データ

表1 各部位の糖質濃度

表2 マンニトール、グルコースおよび3-0MGの連続処理が小花の落下に及ぼす影響

表3 エチレン処理が糖で連続処理した小花のがく片の脱離に及ぼす影響

図1 マンニトール、グルコースおよび3-0MGの連続処理が小花のエチレン生成量に及ぼす影響

その他

  • 研究課題名:花きにおけるポリオール類の生理的役割の解明と機能性ポリオールの開発
  • 予算区分 :バイテク[糖質工学]
  • 研究期間 :平成11年度(平成9~12年)
  • 研究担当者:市村一雄・木幡勝則・後藤理恵・向井俊博
  • 発表論文等:Soluble carbohydrates in Delphinium and their influence on sepal abscission in cut flowers,Physiologia Plantarum,2000 (in press).