DNAマーカーを用いた緑茶品種分化の解明

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要約

フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)をDNAマーカーに用い た解析により、日本在来種が、中国在来種に較べ遺伝的多様性に乏しく、 均一な集団であるとともに、日本の緑茶品種群が在来種からの選抜と'やぶきた'と の交配を経て育成過程を明らかにできる。

  • キーワード: フェニルアラニンアンモニアリアーゼ、DNAマーカー、遺伝的、多様 性、均一、集団、育成過程
  • 担当:野菜・茶業試験場 茶栽培部 生理遺伝研究室
  • 連絡先:0547-45-4419
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:バイテク
  • 対象:茶
  • 分類:研究

背景・ねらい

チャは形態的な特徴に乏しいため、遺伝資源の分類・評価及び品種を識別できる適切な指標がなく、特に育種を行う上で必要な知見である品種分化の解明が不十分である。そこでカテキン合成系に関係するフェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)を DNAマーカーに用いて中国在来種、日本在来種の遺伝的多様性 を検出し、緑茶の品種分化を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • PALをプローブに用いたRFLP解析により、中国在来種では多くの多型が生じ、遺伝的多様 性が大きいのに対し、日本在来種は3種類(A,B,D)が多型を示し、多様性に乏しい (図1) 。
  • 日本在来種のPAL遺伝子頻度は、Aが0.66、Bが0.08、Dが0.22程度で地域間の差は なく、均一な集団である (図2) 。
  • 日本の緑茶品種の分化は、まず在来種から選抜したことにより、育成された品種の 多くはAA型であったが、つぎに'やぶきた'(BD)の交配親への使用に伴い、AA型から他の遺 伝子型をもつ品種の育成へと進んだことが明らかである (表1) 。
  • DNAマーカーは、チャの品種分化の経路を科学的に明らかにできるとともに、日中の チャの違いを遺伝的な多様性に基づいて検出できる。

成果の活用面・留意点

  • チャの育種を進める上で変異の幅を拡大するためには、海外の育種素材の活用が 効果的である。
  • A,B,Dの各断片は一遺伝子座の複対立遺伝子として遺伝することから、簡易 な親子鑑定に使用できる。
  • A,B,Dの各断片をPCRで検出可能な手法を開発することにより、微量な試料 から迅速な判断が可能になる。

具体的データ

図1 中国在来種(左)と日本在来種(右)のPALRFLPsとPAL遺伝子型

図2 日本在来種別のPAL遺伝子頻度の比較

表1 PAL遺伝子型による緑茶品種の分類

その他

  • 分類:価技術の開発
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成11年度(平成10~12年)
  • 研究担当者:松元哲・竹内敦子・水野直美
  • 発表論文等:RFLP解析による日本のチャの分化.育種学研究,1(別2),1999.