トマト個体群葉面積の適正制御が可能な養液土耕装置の開発

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要約

トマト個体群の生体情報(葉面積指数)に基づき施肥量(窒素)、土壌水分情報(pF)に基づき灌水量をそれぞれ半自動調節する簡易な養液土耕装置を開発した。本装置を用いると、個体群葉面積と施肥量および土壌水分環境の好適制御が可能である。

  • キーワード:トマト、生体情報、施肥量、土壌水分情報、灌水量、半自動調節、養液土耕装置、個体群葉面積、好適制御
  • 担当:野菜・茶業試験場 施設生産部 環境制御研究室
  • 連絡先:0569-72-1596
  • 部会名:野菜・茶業、総合農業
  • 部会名:農業気象
  • 対象:トマト
  • 分類:普及

背景・ねらい

養液土耕は、灌水と施肥作業の自動化を実現するものとして期待されている。しかし、既存の養液土耕装置は、灌水量および肥料(液肥)の混入比率を設 定する仕組みであるため、施肥量を一定にすれば好天継続時は灌水量不足、灌水量を一定とすれば曇雨天継続時は過灌水となる。作物の生育に必要な1日当たり の施肥量は短期間では比較的変更しなくて済むのに対し、灌水量は日々の天候に応じた適正量を施す必要がある。そこで、生体情報による肥料の施用量、土壌水 分情報による灌水量を個々に制御可能な機能を付加し、個体群葉面積と土壌水分環境の適正制御が可能な簡易養液土耕装置を開発する。

成果の内容・特徴

  • 開発した養液土耕装置は、①~⑳の部品を図1のごとく配置、接続、結線する。
  • 毎日の初回灌水を曇雨天でも必要な基本灌水量として、灌水開始時刻と灌水量を稼働時間制御タイマ-⑪を用い設定する。同日2~4回の補助灌水を開始する時刻を稼働時間付きタイマ-⑫を用い初回灌水から2時間の間隔で設定する。灌水量はチュ-ブ点滴穴当たり1回当たり300cc以上に調整する。同日2回目以後の灌水は、圃場に設置した電気接点(電接)コ-ド付きpFメ-タ⑭のpF値が目標値になると電接するよう設定する。
    基本灌水量を定刻に灌水し、土壌水分情報を同日2回目以降の灌水に反映させ、1日の灌水量を1~8倍程度まで可変させることによって、植物の萎れや過灌水をほぼ防止できる。
  • 個体群における葉面積については、個体群の葉面積(調査法:細井,1997)等を指標に、タイマー⑨の可動時間ノブあるいは定量ポンプ③の吐き出し量調整ノブを隔週1回程度調整し、毎日施用する施肥量(窒素量)を増減することにより、目標値に制御できる (表1)。
  • 葉面積指数の制御目標を2及び1.5とした場合、7、8月の暑さによる衰弱、秋の日射量の減少など収量変動を引き起こす気象条件下において、健全に生育し、良質で安定した生産が可能である (表1)。

成果の活用面・留意点

  • 機材は全て市販品であり、既存の養液土耕装置に比較して部品数が少ない。また、本体にコンピュ-タや電磁弁がなく、雷害等事故の発生は少ない。
  • pFメ-タ⑭を圃場に複数本設置し、3~7日毎に最良のものを選ぶ必要がある。
  • 窒素肥料(硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム)以外は、廉価な市販肥料の土壌散布で代替できる。長期間の栽培は、作物に合う養液土耕用肥料(1液式)を使用する。
  • 2日1回灌水の場合は、24時間タイマ-⑩を12時間ON、3日1回灌水では8時間ONと設定し、灌水に関わる稼働時間付きタイマ-⑪、⑫を制御する。
  • 停電時はコック⑰を開き灌水する。
  • 本装置は、メロン、キュウリ及び菊の栽培にも適用可能である。

具体的データ

図1 簡易な養液土耕装置略図

表1 養液土耕装置を用いたトマト個体群の月別葉面積指数及び収量の推移

その他

  • 研究課題名:
    ①気象・地象環境の調節による作物の葉面積を指標とする施設野菜の栽培管理法
    ②養液土耕トマト個体群の葉面積制御技術による気象資源の有効利用技術の開発
  • 予算区分 :①経常、②総合研究〔地域総合〕
  • 研究期間 :①平成7~13年度、②平成12~14年度
  • 研究担当者:細井徳夫・細野達夫・中野明正
  • 発表論文等:窒素少量分施法による養液土耕トマト個体群の葉面積制御.東北の農業気象,45,21~24 2001.
    トマト個体群の持続的維持が可能な葉面積調査法.農業気象東海支部会誌,55,13-16,1997.