茶園における施肥と亜酸化窒素発生との関係

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要約

茶園からは地温の低い冬期を除いて多量の亜酸化窒素が発生する。亜酸化窒素発生量は窒素施肥量 が30 kgN/10aを越えると増加するが、石灰窒素の併用により低く抑えることが出来る。

  • キーワード:茶園、亜酸化窒素、窒素施肥量、石灰窒素
  • 担当:野菜・茶業試験場 茶栽培部 土壌肥料研究室
  • 連絡先:0547-45-4924
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:土壌
  • 対象:茶
  • 分類:指導

背景・ねらい

茶園土壌からは、温室効果ガスである亜酸化窒素が多量に発生することが知られて いる。しかし、圃場での測定例は少なく、発生量削減方法は検討されていない。そこ で、亜酸化窒素による地球環境への負荷を軽減するために、茶園における発生量の実 態調査を行うとともに、発生量削減技術を検討する。

成果の内容・特徴

  • 硫安を年間120 kgN/10a施肥する茶園では、亜酸化窒素発生量は1年を通じて大 きく変化する (図1)。冬期(12~3月)の発生量は少なく、地温の上昇と共に3月末から発生量は増加し、7月に最大ピークに達す る。冬期においても降雨直後には発生が見られる。
  • 硫安を使用して窒素施肥量を変えた圃場では、窒素施肥量が30 kgN/10aを越えると、亜酸化窒素が多量に発生 するようになる (図2A)。
  • 硝酸化成抑制効果がある石灰窒素を窒素成分にして12 kgN分だけ窒素肥料に混合すると、窒素施肥量が同じ場 合、亜酸化窒素発生量を慣行施肥の36~61%に抑えることが出来る (図2B)。
  • 肥効調節型肥料である被覆尿素を使用しても(窒素成分にして67~82%窒素肥料に混合)、年間窒素施肥量が同 じ場合、亜酸化窒素発生量は慣行施肥72 kgN/10aに比べ2倍に増加する (図2C)。窒素施肥量を39 kgN/10aにまで削減すると、発生量を慣行施肥72 kgN/10aの25%にまで抑えることが出来る。
  • 石灰窒素や被覆尿素を使用して施肥量を削減しても、新芽の収量・品質が慣行施 肥に比べて劣ることはない。

成果の活用面・留意点

  • 亜酸化窒素発生量削減を視野に入れた施肥法改善の基礎的知見となる。
  • 測定は畝間において行ったため、樹冠下では発生量が異なる可能性がある。
  • 土壌の種類、気象条件、施肥前歴等により結果が異なる可能性がある。

具体的データ

図1 強酸性窒素多肥茶園からの亜酸化窒素フラックス(平成10~11年調査)。矢印は施肥時期と10aあたりの窒素施肥量を示す。

図2 施肥量・窒素肥料形態と亜酸化窒素発生量の関係。A:硫安施肥量、B:石灰窒素、C:被覆尿素。

その他

  • 研究課題名:茶園からの亜酸化窒素生成量削減技術の開発
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成12年度(平成11~12年)
  • 研究担当者:徳田進一・渡部育夫・加藤忠司(退職)・野中邦彦
  • 発表論文等:Nitrous oxide production from strongly acid tea field soils. Soil Sci. Plant Nutr ., 46(4),835-844,2000.