ハダニの天敵農薬チリカブリダニの合成ピレスロイド剤抵抗性

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要約

ハダニの天敵農薬であるチリカブリダニは一般に殺虫剤に弱いが、A社の製剤の中には合成ピレス ロイド剤抵抗性の個体が高率に含まれ、その程度は実用濃度でも影響を受けないほどの強さで、7種の合 ピレ剤に及ぶ。

  • キーワード:チリカブリダニ、合成ピレスロイド剤、抵抗性
  • 担当:野菜・茶業試験場 環境部 上席研究官
  • 連絡先:059-268-4643
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:作物虫害
  • 対象:天敵
  • 分類:研究

背景・ねらい

チリカブリダニはハダニの天敵農薬として優れているが、殺虫剤に弱いことが利用の妨げになっている。合成ピレスロイ ド剤(以下合ピレ剤と呼ぶ)は殺虫剤の 中でも天敵に悪影響が強い剤で、しばしばハダニのリサージェンス(散布後の大発生)を引き起こす。合ピレ剤散布下で も活躍できるチリカブリダニがあれば、 利用場面が拡大する。市販の製剤の中に抵抗性チリカブリダニが混入していることを発見したので、抵抗性の薬剤の範囲 や程度を明らかにしようとした。

成果の内容・特徴

  • A社のチリカブリダニ製剤は、合ピレ剤抵抗性個体を高い率で含んでいる (表1)。
  • 生き残った抵抗性系統は実用より高濃度の合ピレ剤(250倍液、80ppm)の散布でも死 亡個体はなく (表2)、卵に散布されても、その後の発育に影響が見られない (表3)。
  • 感受性系統のチリカブリダニは、ペルメトリン5万倍(0.4ppm)でも、95%の死亡率で (表2)、抵抗性比は200倍(80ppm/0.4ppm)以上の極めて強い抵抗性である。
  • 実用濃度でもほとんど死なない程の抵抗性を示す薬剤の範囲は、合ピレ剤に属す7種 に及ぶ (表4)。

成果の活用面・留意点

  • この抵抗性チリカブリダニは、合ピレ剤が散布された環境下でも、ハダニ防除に有 効に働くと考えられる。
  • A社以外の製剤では抵抗性個体はほとんど見られない。

具体的データ

表1 ペルメトリン1,000倍散布でのチリカブリダニ成虫の生存率

表2 ペルメトリン高濃度散布によるチリカブリダニ雌成虫への影響

表3 卵に対するシペルメトリンの影響

表4 各種合ピレ剤のチリカブリダニ雌成虫への影響

その他

  • 研究課題名:薬剤抵抗性カブリダニによるハダニ類の防除を核とした害虫の総合防除技術の確立
  • 予算区分 :持続的農業(IPM)
  • 研究期間 :平成12年度(平成11~13年)
  • 研究担当者:浜村徹三
  • 発表論文等:チリカブリダニの合成ピレスロイド剤抵抗性.第6回日本ダニ学会大会講演要旨,日本ダニ学会誌7 (1),57,1998.