イチゴ収穫・調製作業の省力化に適した果房形態特性

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

イチゴ果実は着果節の果梗が太くて長いほど大果であり、太さと長さが揃っているほど果実の 揃いが優れる傾向にあり、それらの形質は高い遺伝力を示す。揃いの良い大果品種の育成には 'Pajaro'に代表される直枝型果房が選抜指標となる。

  • キーワード:イチゴ、着果節、大果、揃い、遺伝力、'Pajaro'、直枝型果房
  • 担当:野菜・茶業試験場 久留米支場 栄養繁殖性野菜育種研究室
  • 連絡先:0942-43-8271
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:育種
  • 対象:いちご
  • 分類:研究

背景・ねらい

大きさの揃った大果品種は、収穫・調製作業の大幅な省力化が可能となることから、それらの特徴を有する果房形態 特性を解明し、品種育成上の選抜指標を明らかにするとともに、それらの遺伝性について検討する。

成果の内容・特徴

  • 果重は、着果節果梗の太さ(直径)(A)と長さ(B)の積(A・B:X1)、地際部から果実までの全果梗長(C: X2)、着果果梗長と全果梗長の 比率(B/X2)と着果果梗径と基部節果梗の太さ(D)の比率(A/D)との積(B/X2・A/D:X3)を説明変数と する重回帰式によって表され、着果 節果梗が太くて長いものが大果になる傾向にある (図1及び 図2)。
  • 果重のばらつき(変動係数)は、着果節果梗の太さ×長さ(X1)の変動係数との間に有意な正の相関がみら れ、着果節果梗の太さと長さが揃っている(変動係数が小さい)ほど、果実の揃いが優れる傾向にある (図3)。
  • 大果で揃いの良い省力型果房を有する品種の育成には、着果節果梗の太くて長い 'Pajaro'の直枝型果房形態を選抜指標にするのが良い (図4)。
  • 果実の大きさに関わる説明変数X1,X3は不完全優性に、また、X1の変動係数は 大きくなる側に優性と 考えられ、ともに高い遺伝力を示す (表1)。

成果の活用面・留意点

  • 'Pajaro'の直枝型果房を持つ系統は、'女峰'のような高次花の割合が高い品種との交配でも、後代に着果節果梗 が太くて長く、かつ揃った個体が数多く得られるので、省力型果房形態を有する系統育成のための交配親として有用であ る。
  • 省力型果房を持つ系統は、成熟が集中する傾向が強いので、促成栽培においては過度の着果負担が起こらない ように留意する。

具体的データ

図1 果房形態概念図

図2 7種のイチゴ品種の果重実測値と果房形態の説明係数による推定果重との相関関係

図3 実測果重変動係数と着果節果梗の太さ×長さの変動係数との相関関係

図4 果実が大きく、揃いの優れた理想的果房形態

表1 '女峰'と'Pajaro'との交配後代および自殖後代における果房形態の説明変数×1、×3および×1の変動係数の広義の遺伝力

その他

  • 研究課題名:省力果房型品種の形態特性の解明と品種の育成
  • 予算区分 :連携開発(超省力園芸)
  • 研究期間 :平成12年度(平成9~12年)
  • 研究担当者:曽根一純・望月龍也(九農試)・野口裕司(北農試)・沖村 誠
  • 発表論文等:促成栽培イチゴにおける果房型関連形質の解析.園学雑64,別2,414-415,1995.
    イチゴの収穫・調整作業の省力化に関わる果房形態特性の解明.園学雑67,別2,320,1998.
    イチゴの収穫・調整作業の省力化に関わる果房形態特性の遺伝様式.園学雑68,別2,251,1999.