トレニア形質転換体の花色にコピグメンテーションが及ぼす影響

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要約

トレニア形質転換体の花色が、CHS遺伝子導入個体では赤味を、DFR遺伝子導入 個体では青味を帯びる現象の原因がコピグメンテーション効果によることをアントシアニン及びフラ ボンの再混合実験を行い確認した。

  • キーワード:トレニア、花色、CHS遺伝子、DFR遺伝子、コピグメンテーション、アントシアニン、フラボン
  • 担当:野菜・茶業試験場 花き部 育種法研究室
  • 連絡先:059-268-4661
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:バイテク
  • 対象:花き類
  • 分類:研究

背景・ねらい

当研究室で作出したトレニア形質転換体の花色の変化について解析した結果、アントシアニン生合成系において上流 に位置するカルコン合成酵素(CHS)遺伝子を導入した場合には花色が赤みを帯びるのに対し、下流に位置するジヒド ロフラボノール還元酵素(DFR)遺伝子を導入した個体では花色が青みを帯びている。そこで、この現象の原因を明ら かにする。

成果の内容・特徴

  • 形質転換実験の材料系統(紫花)には、アントシアニンとしてdelphinidin 3,5-diglucoside、cyanidin 3,5-diglucoside、petunidin 3,5-diglucoside、peonidin 3,5-diglucoside及びmalvidin 3,5-diglucoside (図1、アントシアニン1-5)が、また、フラボンとしてluteolin 7-glucoside、luteolin 7-glucuronide及びapigenin 7-glucuronide (図1、 フラボン1-3)が含まれている。アントシアニン量は、野生型を100とした場合、CHS遺伝子導入個体では15、DFR遺 伝子導入個体では14であり同 程度減少している。一方、フラボンはCHS遺伝子導入個体では34と減少しているのに対し、DFR遺伝子導入個体では 151と逆に増加している。
  • 再混合実験の結果、フラボン濃度が上昇するにつれて青みがかった色合いになり、可視光吸収スペクトルの極 大値が540nmから570nmに変化する (図2)。 これらの値は、赤みがかった個体及び青みがかった個体の生花弁及びさく汁の吸収極大値と一致している。このことから 、この現象は、コピグメンテーションに よることが明らかである。なお、コピグメンテーションとは、アントシアニンとフラボン等の物質(コピグメント)との 相互作用によりアントシアニンの発色が 安定化するとともに青みがかる現象のことである。

成果の活用面・留意点

  • トレニアの花色の改変に利用できる。
  • 他の花きにおける遺伝子組換えによる花色の改変のためのモデルとなる。

具体的データ

図1 トレニア花弁抽出物のHPLC分析結果

図2 アントシアニンとフラボンの再混合実験

その他

  • 研究課題名:遺伝子組換え植物における花色発現調節因子の解明
  • 予算区分 :パイオニア特研 [アントシアニン]
  • 研究期間 :平成12年度(平成8~11年)
  • 研究担当者:間竜太郎・岸本早苗・柴田道夫・吉田久美(椙山女学園大学、現 名古屋大学)・近藤忠雄(名古屋大学)
  • 発表論文等:Copigmentation gives bluer flowers on transgenic torenia plants with the antisense dihydroflavonol-4-reductase gene. Plant Science, 160:49-56, 2000.