DNAマーカーを用いたチャ品種識別技術

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

チャの二次代謝に関与する6遺伝子座13個のDNAマーカーを比較することにより、チャ45品種の識 別ができる。特に主要品種の'やぶきた'は特徴的なマーカーを有するため容易に識別できる。

  • キーワード:二次代謝、13個のDNAマーカー、チャ45品種の識別、'やぶきた'
  • 担当:野菜・茶業試験場 茶栽培部 生理遺伝研究室
  • 連絡先:0547-45-4419
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:バイテク
  • 対象:茶
  • 分類:研究

背景・ねらい

緑茶の主要品種である'やぶきた'は品種茶園栽培面積の約84%を占めているが、摘採時期の集中や味、香りの単一 化が問題となっており、脱'やぶきた'に向けた取り組みが加速している。チャの多品種化に伴い、育種場面のみならず 、栽培、加工・流通面でも品種の識別が必要である。しかしチャの葉型、葉の大小、葉色等は品種間差異が少なく、また 栽培条件によって変わりやすいため、外部形態から品種を識別することは難しい。DNAマーカーは試料の栽培条件を問わ ず、微量なDNAでも品種識別が可能である。本研究のねらいはDNAマーカーの検索及びチャ品種の識別技術の開発である。

成果の内容・特徴

  • 新鮮葉から抽出したDNAを用い、複数の二次代謝関連遺伝子を標的にしたPCR反応を行った。フェニルアラニンアンモ ニアリアーゼ(PAL)のイントロン部分は、α型と欠失のあるβ型があり (図1左)、さらにα型は制限酵素DdeI処理によりα1とα2型に分かれる。これらを用いてチャ品種を6遺伝子型に分類できる (図1右)。
  • 'やぶきた'はチャ45品種の中でα2α2 型を示す唯一の品種であるため識別は極めて容易である。ββ型は'あさつゆ'、'うじみどり'の2品 種のみであり、'やぶきた'と'あさつゆ'を交配親にもつ'さえみどり'はα2 β型である。
  • ジヒドロフラボノール・レタクターゼ(DFR)のイントロン3部分は、Hind III制限酵素認識部位の有無 で2個(A1とA2)に分かれ、チャ品種を3 遺伝子型(A1A1,A 1A2,A2A2)に分類できる (図2)。
  • このほかPALエクソン1、2、DFRイントロン4及びカルコンシンターゼ(CHS)エクソン2部分の合計6遺伝子 座13個のDNAマーカーを利用して (表1)、チャ45品種について識別が可能である (表2)。

成果の活用面・留意点

  • 製造加工された茶をDNA試料として用いる場合は、PCRによる増幅反応が進みにくいDNAマーカーもあるため、注意す る。
  • 各DNAマーカーは一遺伝子座の対立遺伝子として遺伝することから、親子鑑定に使用できる。

具体的データ

図1 PALイントロン1を標的にしたPCR及び制限酵素断片長多型

図2 DFRイントロン3を標的にしたPCR制限酵素処理したDNA断片長多型

表1 チャ品種識別に使用した標的DNA、制限酵素及びDNAマーカー

表2 13個のDNAマーカーを用いて識別可能なチャ品種

その他

  • 研究課題名:遺伝子マーカーを用いたチャ遺伝資源の分類・評価技術の開発
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成12年度(平成10~12年)
  • 研究担当者:松元哲・Shiv Shankhar Kaundun・水野直美
  • 発表論文等:PCR-RFLP methodology to detect polymorphism in three key genes of the phenylpropanoidpathway in tea, Camellia sinensis (L.) O. Kuntze. Final abstract guide of Plant & Animal genome IX. (San Diego), 225, 2001.