細胞質遺伝するDNAマーカーによる日本のチャ品種の類型化

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要約

チャにおいて、種子親からのみ遺伝するDNAマーカー(細胞質遺伝DNAマーカー)が見出される。細胞質遺 伝DNAマーカーによりチャ品種の細胞質類型化を行うと、日本のチャ品種のほとんどが'やぶきた' 型、または'あさつゆ'型の細胞質に分類される。

  • キーワード:DNAマーカー、細胞質遺伝、細胞質、類型化、'やぶきた'型、'あさつゆ'型
  • 担当:野菜・茶業試験場 茶栽培部 暖地茶樹育種研究室
  • 連絡先:0993-76-2126
  • 部会名:野菜・茶業、生物資源
  • 専門:バイテク、生物工学
  • 対象:茶
  • 分類:研究

背景・ねらい

真核生物のほとんどの遺伝子は細胞内の核ゲノム中に存在するが、一部の遺伝子は細胞質に存在する。被子植物では 一般に細胞質は種子親からのみ遺伝する。細胞質遺伝するDNAマーカーを得て、細胞質DNAを解析することにより、チャ品 種の細胞質の遺伝的背景を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • チャの正逆交雑に由来する集団を用いて種子親からのみ遺伝するDNAマーカーが得られる。
  • 細胞質遺伝DNAマーカーは分子量が大きい傾向にあり、細胞一つあたりのコピー数の多いミトコンドリアまたは 葉緑体 DNAが増幅した結果と考察される (表1)。
  • チャ品種・系統について細胞質遺伝DNAマーカーを調査すると、各細胞質遺伝DNAマーカー間には特定のパター ンが存在する (表2)。
  • 細胞質DNAマーカーを用いてを日本在来のチャに由来するチャ品種を分類すると、ほとんどが'やぶきた'型と 'あさつゆ'型の2つのタイプに分類され、多様性が乏しい (表3)。

成果の活用面・留意点

  • 他の作物において、細胞質の多様性の低下が特定病害の激発を引き起した例がある。現在の日本のチャ品種の細胞質 は多様性に乏しい。海外からの導入 系統等、'やぶきた'型と'あさつゆ'型以外の品種・系統を種子親として使用することにより、細胞質の多様化を図っ てゆくことが望ましい。
  • 細胞質遺伝DNAマーカーは親子鑑定の際、種子親の検定に使用することができる。
  • 細胞質遺伝DNAマーカーは系統分類学的な解析に有効である。

具体的データ

表1 細胞質遺伝DNAマーカーバンドの推定塩基長における特徴

表2 供試各品種・系統の細胞質遺伝DNAマーカーの有無

表3 チャ品種・系統の細胞質のタイプ

その他

  • 研究課題名:分子マーカー等による連鎖地図の作成とQTL解析
  • 予算区分 :経常、イネゲノム(DNAマーカー)
  • 研究期間 :平成12年度(平成8~12年)
  • 研究担当者:田中淳一・武田善行
  • 発表論文等:母性遺伝RAPDの検出とそれを用いた細胞質の分類の可能性.育種学研究,1(別1),173,1999.