茶葉中のIgE抗体産生抑制物質ストリクチニン
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要約
ヒトB細胞株を用いて、茶葉中から見出した新たな抗アレルギー物質は、IgE産生B細胞への分化誘導( クラススイッチ)を抑制するストリクチニンである。
- キーワード:茶葉、抗アレルギー物質、ストリクチニン
- 担当:野菜・茶業試験場 茶利用加工部 製品開発研究室
- 部会名:野菜・茶業、食品
- 専門:製品開発
- 対象:茶
- 分類:研究
背景・ねらい
社会問題化しているアレルギー疾患は、過度の免疫反応であり、医療費の増大への危惧、医薬品の抗アレルギー剤が 持つ副作用への不安から天然物、特に食品中からの抗アレルギー物質の探索が強く求められてきた。そこで、ヒトB細胞 株を用い、生理機能性が数多く報告されている嗜好飲料である茶葉中から抗アレルギー物質を探索し、その単離・精製を 試みる。
成果の内容・特徴
- ヒトB細胞株DND39のIL-4刺激時におけるIgE産生B細胞への分化誘導抑制(IgEクラススイッ チ抑制)を調べるIgE重鎖胚型転写発現法(胚型転写物(CεGT)測定法)で探索して得 られた茶葉中の新たな抗アレルギー物質は、 図1のような分画法により分画されるFr.3(活性測定: 図2)より精製・単離できるストリクチニンである(化学構造式: 図3)。
- ストリクチニンは、IL-4刺激によるCεGT発現を強く抑制し、効果は1μM以下 で現れる (図4)。
- ストリクチニンは、'べにふじ'等の乾燥茶葉中に約0.05%含有される。
成果の活用面・留意点
茶葉中に含まれるストリクチニンはアレルギー反応でも初期のIgE産生を抑制するので、ストリクチニンを多く含 む品種の茶は、抗アレルギー性を有した機能性素材に利用可能である。本研究結果は、ヒト培養細胞を用いた検討で得ら れたものであり、ヒトでの効果(臨床)を確認する必要がある。
具体的データ




その他
- 研究課題名:ヒトアレルギー関与細胞株の樹立とその細胞機能の解析
- 予算区分 :生研機構基礎研究推進事業
- 研究期間 :平成12年度(平成8年~12年)
- 研究担当者:山本(前田)万里・立花宏文(九州大学)・宮瀬敏男(静岡県立大)
- 発表論文等:Identification of an inhibitor for interleukin 4-induced e germline transcription and antigen-specific IgE production in vivo. Biochem. Biophys. Res. Commun. 280, 53-60, 2001.
茶葉成分strictininによるIgEクラススイッチ抑制.日本農芸化学会誌, 74臨増,283, 2000. 抗アレルギー剤として特許出願中(特願2000-第195672号).