茶葉中カテキン類のがん転移抑制効果
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要約
茶葉中のエピガロカテキンガレート、エピカテキンガレート等エステル型カテキン類がが ん転移抑制効果を有することをヒト培養細胞系を用いて確認した。抑制物質はがん細胞からの基底膜破壊酵素 分泌、遺伝子発現を抑制することで効果を示す。
- キーワード:茶葉中、エピガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、がん転移抑制効果、基底膜破壊酵素
- 担当:野菜・茶業試験場 茶利用加工部 製品開発研究室
- 連絡先:0547-45-4964
- 部会名:野菜・茶業、食品
- 専門:製品開発
- 対象:茶
- 分類:研究
背景・ねらい
近年、消費者の健康志向の高まりから、嗜好飲料であり様々な機能性を有する茶の新たな機能性探索が強く求められ てきた。そこで、新たな機能性として、茶葉ポリフェノール類中にがん転移抑制物質の探索を行い、その作用機作を明ら かにする。
成果の内容・特徴
- エステル型カテキン類 (図1)はヒト高転移性がん細胞株(HT1080)と血管内皮細胞株(HUVEC-C)によるヒト細胞複合培養評価系において、がん 浸潤を抑制する (図2)。遊離型カテキン類は効果を示さない。
- エステル型カテキン類のうち、エピガロカテキンガレート(EGCg)は、がん細胞が産生し、血管内転移過程で重 要な役割を果たす基底膜破壊酵素であるマトリクスメタロプロテイナーゼ(gelatinase; MMP-2、-9)の分泌 (図3)、細胞内mRNA発現 (図4)さらにプロモータ活性 (図5)を抑制する。
- EGCgの細胞内MMPsのmRNA発現抑制のED50(発現を50%阻害する濃度)は約4 μMである。
成果の活用面・留意点
エステル型カテキン類のうち、特にエピガロカテキンガレートは低濃度で基底膜破壊酵素MMPsの活性をプロモータ領域で 抑制する。エステル型カテキン高含 有茶は、がん転移抑制作用を有する機能性飲料として利用しうる可能性がある。この効果は、動物実験で確かめる必要がある。
具体的データ





その他
- 研究課題名:カメリア類のポリフェノールにおける新機能性の解明
- 予算区分 :先端技術開発研究「新需要創出」
- 研究期間 :平成12年度(平成10年~12年)
- 研究担当者:山本(前田)万里・辻 顕光
- 発表論文等:ヒト細胞株を使ったがん浸潤阻害物質検索法の開発と茶カテキン類への応用,茶業研究報告,86,31-35,1998.
Effects of tea polyphenols on the invasion and matrix metalloproteinases activities of human fibrosarcoma HT-1080 cells.
J.Agric. Food Chem., 47(6), 2350-2354, 1999.
茶ポリフェノール類のがん転移抑制効果.日本食品科学工学会誌,47(8),567-572,2000.