チャ種子サポニン類の耐塩性酵母生育阻害効果

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要約

チャ種子サポニン類は、耐塩性酵母Zygosaccharomyces rouxii に対し、生育阻害効果 を示す。特に、塩化ナトリウム高濃度下での阻害効果は著しく、3M 塩化ナトリウム濃度の時の最小生育阻止濃度は5 μg/mlである。

  • キーワード:チャ種子サポニン類、耐塩性酵母Zygosaccharomyces rouxii 、生育阻害効果
  • 担当:野菜・茶業試験場 茶利用加工部 品質化学研究室
  • 連絡先:0547-45-4982
  • 部会名:野菜・茶業、食品
  • 専門:品質化学
  • 対象:茶
  • 分類:研究

背景・ねらい

耐塩性酵母Zygosaccharomyces rouxii は、いわゆる白カビとして知られており、味噌・醤油醸造において有用な酵母である一方、含塩発酵食品の代表的な汚染 酵母でもあることから、その発生を制御 できる物質が必要とされている。一方、チャ種子サポニン類(TSS)は酵母類に対し抗菌活性のあることが知られており 、Z.rouxii に対する塩化ナトリウム(NaCl)高濃度下での阻害効果を明らかにし、白カビ発生抑制剤としての実 用化の可能性を検討することは、TSSの新需要創出を図る上からも重要である。

成果の内容・特徴

  • TSSのZ.rouxii (ATCC 52968)に対する最小生育阻止濃度(MIC)は、NaCl非共存下では125μg/mlであるの に対し、NaCl共存下ではNaCl濃度に依存して減少し、3M NaCl共存下でのMICは5μg/mlである (表1)。
  • 様々なチャ品種より調製したTSSの生育阻害効果はほぼ同等であり、阻害効果の品種間差は認められない (表2)。
  • 2M NaCl共存下において、TSSは10μg/mlの濃度のときpH3.5以下あるいはpH6以上の領域で阻害効果を示したの に対し、20μg/mlの濃度のときはpH3以上のいずれの領域でも効果を示したことから、阻害効果は調整培地のpHに依存す る (図1)。

成果の活用面・留意点

  • 耐塩性酵母生育阻害効果に基づく醤油等の過発酵防止剤として、また、一般食品と比較してNaCl濃度の高い漬け物等 の保存剤としての利用が考えられる。
  • 味噌のような固形物に対しては、生育阻害効果は減少する。

具体的データ

図1 NaCl共存下でのTSSのZ.rouxiiに対する生育阻害効果

図2 品種別に調製したTSSのZ.rouxiiに対する生育阻害効果

図1 TSSのZ.rouxii生育阻害に及ぼす調製培地のpHの影響

その他

  • 研究課題名:カメリア類のサポニン利用製品の開発
  • 予算区分 :先端技術開発研究「新需要創出」
  • 研究期間 :平成12年度(平成10年~12年)
  • 研究担当者:木幡勝則・富田 実(徳島県工技センター)・堀江秀樹・氏原ともみ
  • 発表論文等:Development of a simple preparation method of tea-seed saponins,and investigation on their antiyeast activity, JARQ, in press., 2001.Theasaponin E1 destroys the salt tolerance of yeasts. J.Biosci.Bioeng., 90, 637-642, 2000.