チャ種子サポニン類のチャ炭疽病防除効果
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要約
チャ種子サポニン類は、チャ炭疽病に対し防除効果を示す。無処理を基にした防除率は約77% である。防除作用機構は発芽胞子の付着器形成阻害によるチャ葉への侵入抑制に起因する。
- キーワード:チャ種子サポニン類、チャ炭疽病、防除効果、付着器形成阻害
- 担当:野菜・茶業試験場 茶利用加工部 品質化学研究室
- 連絡先:0547-45-4982
- 部会名:野菜・茶業、食品
- 専門:品質化学
- 対象:茶
- 分類:研究
背景・ねらい
チャの主要病害の一つである炭疽病の防除には、現在化学合成農薬が用いられているが、環境への負荷軽減のために も化学農薬の使用に頼った防除体系を見直す必要に迫られており、化学農薬に代わる様々な防除剤の開発が試みられてい る。一方、チャ種子に高率に含まれるチャ種子サポニン類(TSS)は、土壌菌等に対し抗菌効果のあることが知られてお り、チャ炭疽病に対しても防除効果が認められれば、環境負荷の少ない天然物由来の防除剤として、実用化が期待できる 。
成果の内容・特徴
- 圃場での自然発生条件下において、TSSの500倍(2mg/ml)希釈3回処理でのチャ炭疽病に対する無処理区を基にし た防除率は76.8%で あり、対照化学農薬(TPN)と比較して劣るものの、環境負荷軽減を目的に、現在開発が進められている弱アルカリ剤等 の防除剤と同程度である (表1)。
- 1病斑当たりの胞子形成数において、TSS (2mg/ml)ではTPNおよび蒸留水と比較して約1.6および1.9倍増加す る (表2)。また、チャ葉面上での発芽率も無処理区と比較して約1.3倍増加するが、胞子の付着器形成率は無処理区の 1/11に減少する (表3)。
- TSS(2mg/ml)はチャ炭疽病菌胞子の発芽を促進するが、発芽した胞子の付着器形成を阻害し、チャ葉への侵入 を抑制することから、結果として防除効果を示すものと推察される。
- 発芽促進作用はTSS>チャ葉サポニン>Tween 80(界面活性剤)>キラヤサポニン>ダイズサポニンの順であり 、TSSの効果が最も大きい (図1)。
成果の活用面・留意点
- 環境負荷の少ない天然物由来のチャ炭疽病防除剤としての実用化が期待できる。
- 実用化にあたっては、TSS濃度、散布時期、散布間隔、散布回数等について検討する必要がある。
- 防除効果を上げるためには、他の防除剤との併用効果について検討する必要がある。
具体的データ




その他
- 研究課題名:カメリア類のサポニン利用製品の開発
- 予算区分 :先端技術開発研究「新需要創出」
- 研究期間 :平成12年度(平成10年~12年)
- 研究担当者:木幡勝則・伊藤陽子(企画連絡室)・山田憲吾・堀江秀樹
- 発表論文等:チャ炭疽病に対する茶種子サポニンの影響.日本植物病理学会報,65,p.681,1999.
茶種子に含まれるサポニンに関する研究.茶学術研究会講演要旨,10-13,2000.