煎茶製造におけるクロロフィラーゼ活性変化
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要約
クロロフィラーゼ(CHLase)活性は蒸熱時間が長くなる程減少し、120秒以上の蒸しでは活性はほとんど
残存しない。また、CHLase活性は蒸熱により急減するが、乾燥までのその後の煎茶製造工程ではほとんど変化し
ない。市販煎茶中にはCHLase活性が残存し、活性に基づく総フェオホルビドa 生成量は上級なも
の程多い。
- キーワード:クロロフィラーゼ(CHLase)活性、蒸熱時間、煎茶製造工程、市販煎茶中、総フェオホルビドa
生成量
- 担当:野菜・茶業試験場 茶利用加工部 品質化学研究室
- 連絡先:0547-45-4982
- 部会名:野菜・茶業
- 専門:品質化学
- 対象:茶
- 分類:研究
背景・ねらい
チャ生葉は摘採後直ちに蒸熱されることから、酵素活性はほとんど残存しないとされているが、蒸熱時間や蒸熱を含
む製茶工程が酵素活性に与える影響についてはほとんど検討されていない。そこで、クロロフィルの加水分解作用を示す
クロロフィラーゼ(CHLase)に着目し、蒸熱時間や製茶工程がCHLase活性に与える影響について検討した上で、市販煎茶の
残存活性の有無及びその程度について明らかにする。CHLase活性能はフェオホルビドa (PB a )生成能
より換算し求められることから、残存活性に基づくPBa 生成量を明らかにすることで、人に対して光過敏毒性を
示すPBa 量に基づく市販煎茶の健全性評価に資する。
成果の内容・特徴
- CHLase活性は蒸熱時間が長くなる程減少し、生葉のそれと比較して25秒蒸しで約1/5、60秒蒸しで約1/20になる。120
秒以上の蒸し時間では活性はほとんど残存しない
(図1)。
- CHLase活性は蒸熱(送帯式蒸し機で50秒)により急減するが、乾燥までのその後の煎茶製造工程ではほとんど
変化しない。120℃、30分の火入れでは、活性は荒茶のそれの約 2/3に減少するが、依然残存する
(図2)。
- 市販煎茶中の総PBa 平均生成量は約105 mg/100 gであり、CHLase活性の残存が明らかである。総PB
a 生成量は上級と下級との間に有意差が認められ、上級なもの程多い傾向にある
(表1)。上級の一部にはクロレラでの基準値(160mg/100g)を超えるものもあるが、通常の食用茶としての用途では
CHLaseが作用できる環境にはなく、従って、ほとんど問題ない。
成果の活用面・留意点
- 煎茶製造工程における酵素活性変化の基礎的資料として活用できる。
- 総PBa 生成量より、ある程度市販煎茶の等級判別ができる可能性がある。しかし、総PBa 生
成量が少なく、級間に有意差の認められない深蒸し煎茶では困難である。
- 蒸熱時間及び煎茶製造工程毎のCHLase活性は、茶葉よりアセトンパウダーを調製し、PBa 生成量より
求めた値であり、絶対活性値ではない。
具体的データ



その他
- 研究課題名:茶におけるフェオホルバイドを含むクロロフィル誘導体の分離定量法及び健全性評価法の確立
- 予算区分 :経常
- 研究期間 :平成12年度(平成9年~12年)
- 研究担当者:木幡勝則・氏原ともみ・堀江秀樹
- 発表論文等:Pheophorbide a content and chlorophyll activity in green tea, Biosci.Biotechnol. Biochem., 62, 1660-1663, 1998.
緑茶の蒸熱に伴うクロロフィラーゼ活性の変化とフェオホルビトa の生成.日食科工誌、46,725-730,1999.