ハルザキヤマガラシに含まれるコナガ摂食阻害物質

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要約

コナガ抵抗性のアブラナ科帰化植物ハルザキヤマガラシに含まれるコナガ摂食阻害物質は、ヘデラゲニンの3位にセロビオースが結合したサポニンである。

  • キーワード:コナガ、ハルザキヤマガラシ、アブラナ科、摂食阻害物質、耐虫性、サポニン
  • 担当:野菜茶研・葉根菜研究部・虫害研究室、長野県野菜花き試、福岡大学、花き研
  • 連絡先:059-268-4643
  • 区分:野菜茶業・野菜生産環境
  • 分類:科学・普及

背景・ねらい

コナガは多くのアブラナ科作物を加害する重要害虫であるが、ヨーロッパ原産のアブラナ科帰化雑草、ハルザキヤマガラシには例外的に寄生しない。そこでハルザキヤマガラシのコナガ抵抗性機構を明らかにし、コナガ抵抗性アブラナ科作物育成のための基礎データを得る。

成果の内容・特徴

  • ハルザキヤマガラシ葉からコナガ幼虫摂食阻害物質を単離し、その構造を決定した。
  • 本物質は、ヘデラゲニンの3位にセロビオースが結合したサポニンである(図1)。本物質は、これまでにヤツデの果実からのみ単離されている。アブラナ科植物由来のサポニンはたいへん稀である。
  • 本物質をキャベツ葉片(直径19 mm、約100 mg)に50 mg以上塗って与えると、コナガ3齢幼虫の摂食は強く阻害される(図2)。
  • 本物質をキャベツ葉片に50 mg以上塗って与えると、コナガ1齢幼虫は1日後に100%死亡する(図3)。
  • 本物質はハルザキヤマガラシ葉中にコナガ幼虫の摂食を阻害するのに十分な量(新鮮重1g当たり約1 mg)含まれていることから、本物質がハルザキヤマガラシの示すコナガ抵抗性の主要因と考えられる。

成果の活用面・留意点

  • ハルザキヤマガラシは原産地では野菜・薬草として利用されていることから本物質の人畜毒性は低いものと考えられる。
  • 本物質を利用したコナガ忌避剤の開発や、本サポニンを付与したコナガ抵抗性アブラナ科作物の作出が期待される。

具体的データ

図1.ハルザキヤマガラシに含まれるコナガ摂食阻害物質の化学構造

図2.コナガ3齢幼虫の摂食に及ぼすハルザキヤマガラシサポニンの影響 図3.コナガ1齢幼虫の生存に及ぼすハルザキヤマガラシサポニンの影響

その他

  • 研究課題名:ハルザキヤマガラシのコナガ抵抗性機構の解明
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2000~2001年度
  • 研究担当者:篠田徹郎、芹沢啓明、長尾常敦、中山真義、河合章、腰岡政二、岡部光
  • 発表論文等:1) 芹沢ら (2000) 害虫防除剤及び害虫抵抗性植物.特願2000-358883.
    2) Serizawa et al. (2001) Appl. Entomol. Zool. 36:465-470.
    3) Shinoda et al. (2002) J. Chem. Ecol. 28:587-599.