発光ダイオードを用いた暗期光中断による植物花成の制御

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要約

単色光源である発光ダイオードを、電照栽培用の光源として光中断を行うと、橙および赤色光によって、短日植物では花成が抑制され、長日植物では花成が促進される。中間性植物の花成では、光源波長域による差異は小さい。

  • キーワード:発光ダイオード、光中断、長日植物、短日植物、中間性植物
  • 担当:野菜茶研・果菜研究部・栽培システム研究室
  • 連絡先:0569-72-1493
  • 区分:野菜茶業・野菜栽培生理
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

発光ダイオードは、従来光源に比べ消費電力や熱発生が小さく、寿命が長いという利点を持つ。また、花成等の植物の形態形成においては、光の波長域により反応の異なることが知られている。そこで、単色光源で特定波長の照射が可能な発光ダイオードの特徴を生かし、光中断の光源とした場合の植物花成の制御法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 自然日長、短日条件下における短日植物(シソ、コスモス)の花成は、橙(ピーク波長594nm)および赤色光(同655nm)の光中断により抑制される。また、黄緑(同576nm)及び遠赤色光(同745nm)の場合には、種間差がみられる。青色光では、効果は小さい(表1)。
  • 自然日長、短日条件下における長日植物(ゴデチア、ホウレンソウ)の花成は、黄緑、橙および赤色光の光中断により促進される。また、遠赤色光の場合には、品種間差がみられる。青色光では、効果は小さい(表1)。
  • ホウレンソウに対する遠赤色光の光中断は、晩抽性の弱い品種に対して効果が大きく、強晩抽性の品種に対して効果が小さい(表2)。
  • 中間性植物(トマト、キュウリ)の花成では、光源波長域による差異は小さい(表3)。
  • キュウリのセル成型苗では、赤及び遠赤色光による光中断により、胚軸長のばらつきが小さくなる(表4)。

成果の活用面・留意点

  • 光中断は、自然日長、短日条件下において、23:00~1:00の2時間、約10μmol・m-2・s-1の(装置内床面)強度で行っている。
  • キュウリのセル成型苗への光中断では、乾物重のばらつきを抑制することはできない。また、赤色光による光中断では胚軸長が短くなり、遠赤色光の場合には胚軸長は長くなる。

具体的データ

表1 光中断の光源の波長が長短日植物の花成に及ぼす影響

表2 赤色光、遠赤色光による光中断がホウレンソウの抽台に及ぼす影響

表3 各波長域の光中断がキュウリ及びトマトの生育に及ぼす影響

表4 赤色及び遠赤色による光中断が各列のキュウリセル成型苗の胚軸長、乾物重に及ぼす影響

その他

  • 研究課題名:半導体単色発光素子を利用した植物形態制御システムの開発
  • 予算区分:連携実用化
  • 研究期間:1999~2001年度
  • 研究担当者:浜本浩(近中四農研)、島地英夫(花き研)、東出忠桐、高市益行
  • 発表論文等:1) 浜本ら(2000)園学雑69別2:186.
    2) 浜本ら(2001)農環工4学会講要:208.
    3) 浜本ら(2001)園学近畿要旨:12.