部分不活化花粉による種なしスイカのしいな形成と作型の関係
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
部分不活化花粉によって作出される種なしスイカには、しいなが形成される。受粉時刻はしいな形成に影響しない。果実肥大期が高温となる作型では褐色のしいなが形成される果実の割合が増加し、果実肥大期が低温となる作型では白色で皮が厚いしいなの形成割合が増加する。
- キーワード:種なしスイカ、しいな、作型、気温、栽培、部分不活化花粉
- 担当:野菜茶研・果菜研究部・栽培システム研究室
- 連絡先:0569-72-1490
- 区分:野菜茶業・野菜栽培生理
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
最近、軟X線照射によって部分的に不活化された花粉を受粉することによって普通(2倍体)スイカから種なし果実を作出する方法が開発され、新たな種なしスイカ生産技術として注目されている。しかし、3倍体の種なしスイカと同様に、果実中には正常に発育できなかった種子である「しいな」が残る。しいなには白くても皮が厚く食感を損なうものや、外観上稔実種子とほとんど変わらない褐色のものがある。また、栽培時期によってしいなの数が変動することも指摘されている。そこで、部分不活化花粉によって作出される果実内のしいな形成と作型の関係を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 部分不活化花粉によって作出される種なしスイカ果実には、種々のタイプのしいな(半透明で皮が薄いもの、白色で皮が厚いもの、褐色で皮が厚いもの)が形成される(図1)。
- 開花前日夕方から開花当日夕方の間では、受粉時刻の違いによるしいな形成の差は認められない(図2)。
- 早熟栽培(4月定植6月収穫)では褐色のしいなが形成される果実の割合が増加する。一方、抑制栽培(9月定植、12月収穫)では、果実中に形成されるしいなのうち白色で皮の厚いしいなの割合が多くなる傾向がある(表1)。
- 早熟栽培と抑制栽培では、受粉から収穫までの間の温度条件に差があり、早熟栽培では高気温、抑制栽培では低気温で推移する(図3)。
- 種なしスイカにおける種々のタイプのしいな形成には、果実肥大期の気温が関与している可能性が高い。
成果の活用面・留意点
- 部分不活化花粉による種なしスイカ生産に当たっての、作型選定の際の基礎資料となる。
- 本成果は2品種を用いた試験の結果であり、しいな形成と作型の関係については同様の傾向が得られている。しかし、しいな形成には品種間差異があることが認められており、他品種については別途検討する必要がある。
- 花粉への軟X線照射に用いた機器は照射用軟X線発生装置[OM-B101、オーミック社製]、照射線量は800Gyである。
具体的データ




その他
- 研究課題名:軟X線を利用した種なしスイカのしいな形成条件の解明
- 予算区分:交付金(所内プロ)
- 研究期間:1999~2000年度
- 研究担当者:渡邉慎一、中野有加、岡野邦夫(花き研)、杉山慶太、森下昌三、杉山充啓、坂田好輝
- 発表論文等:1)渡邉ら(2001)園学雑70(別2):156.
2)Watanabe et al.(2001) Abstracts for 2nd International Symposium on Cucurbits:65.