スイカ苗生産における果実汚斑細菌病の発生生態

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要約

スイカ果実汚斑細菌病菌は、汚染種子上で26ヶ月以上生存する。汚染種子を播種すると苗上で病原細菌が増殖し、頭上潅水によって周囲の苗に伝染して多くの無病徴保菌苗を形成する。さらに、接木によって高率に健全苗へ第二次伝染する。

  • キーワード:スイカ、果実汚斑細菌病、育苗、接木、種子伝染、発生生態、苗伝染
  • 担当:野菜茶研・果菜研究部・病害研究室
  • 連絡先:059-268-4641
  • 区分:野菜茶業・野菜生産環境
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

1998年に我が国で発生が確認されたスイカ果実汚斑細菌病は、アメリカで発生して甚大な被害をもたらした種子伝染性の病害である。アメリカでは果実での発病が多いことが知られているが、我が国では苗腐敗など、育苗時の発病が多いのが特徴である。これは、我が国のほとんどのスイカは接木栽培されており、育苗時の環境条件が発病と密接に関係していることが予想される。しかし、育苗時の本病の発生生態についてはほとんど解明されていない。そこで、健全な苗の生産するための参考資料となる基礎的データの集積を目的として病原細菌(Acidovorax avenae subsp. citrulli、以下Aac)の動態を中心とした発生生態を解析する。

成果の内容・特徴

  • Aacは、汚染種子上で4~30℃の保存温度に関わらず、26ヶ月以上生存する(図1)。
  • 1種子あたり1cfuのAacで汚染されていても高温多湿等の発病好適条件で、発芽苗は発病する危険性がある(図2)。
  • 汚染種子を播種して発芽直後から多湿条件に保つと、Aacは植物体表面で増殖し、48~72時間後には106~107cfu/g 生葉となる。また、相対湿度80%で育苗した場合でも104cfu/g 生葉までAacは増殖し、無病徴保菌苗となる可能性がある(図3)。
  • 頭上潅水によって、汚染種子に由来する実生苗から周囲の苗にAacが二次伝染し、多くの無病徴保菌苗を形成する(表1)。
  • 接木時に、ナイフなどによってAacが高率に第二次伝染し、その後の高温多湿な育苗管理によって発病が促進される(データ略)。

成果の活用面・留意点

  • スイカの健全苗を生産する上での参考資料として利用できる。

具体的データ

図1.汚染種子のおけるAac数の変動

 

図2.1種子あたりAac保菌数と発病率図3.スイカの実生におけるAac数の変動

 

表1.頭上潅水におけるAacの第二次伝染

その他

  • 研究課題名:発生生態、感染機構の解明
  • 予算区分:行政対応特別研究(スイカ細菌病)
  • 研究期間:1999-2001年度
  • 研究担当者:白川隆、小宮友紀子、我孫子和雄
  • 発表論文等:1) 小宮ら(2000)日植病報 66(3):295(講演要旨).
                      2) 白川ら(2001)日植病報 67(2):208(講演要旨)