チャ赤葉枯病菌感染による 'やぶきた'の生体防御関連酵素の活性化

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要約

チャ品種'やぶきた'の切り離し葉にチャ赤葉枯病菌を付傷接種すると、抵抗性病斑が形成されるとともに,生体防御に関与するキチナーゼ、ペルオキシダーゼおよびポリフェノールオキシダーゼが著しく活性化する。

  • キーワード:チャ、病害抵抗性、チャ赤葉枯病、チャ輪斑病、生体防御関連酵素
  • 担当:野菜茶研・茶業研究部・育種素材開発チーム
  • 連絡先:0993-76-2126
  • 区分:野菜茶業・茶業
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

チャの病害抵抗性を生理生化学的手法で解析した研究は非常に少なく、チャの耐病性育種を行う上で、病害抵抗性に関与する生体防御機構の情報が必要とされている。チャの主要栽培品種である'やぶきた'はチャ輪斑病には罹病性であるが、チャ赤葉枯病に対しては抵抗性を示す。そこで 'やぶきた'の切り離し葉をモデル実験系としてチャ輪斑病菌およびチャ赤葉枯病菌を接種し、病斑形成とチャの生体防御関連酵素の活性化について明らかにする。

成果の内容・特徴

  • プラスチックシリンジを用いて、チャ赤葉枯病菌ないしはチャ輪斑病菌を'やぶきた'切り離し葉に付傷接種すると(図1)、両病原菌の病斑拡大の差異が観察できる。
  • チャにおけるキチナーゼ、ペルオキシダーゼおよびポリフェノールオキシダーゼは図1に示す方法で調整したチャ粗酵素液と表1に示した活性測定法を用いて測定できる。
  • 'やぶきた' 切り離し葉におけるチャ赤葉枯病の病斑拡大は接種3日後には停止して抵抗性病斑を形成するが、チャ輪斑病では病斑拡大が持続し、罹病性病斑を形成する(表2)。
  • チャ赤葉枯病菌接種葉では接種3日後にキチナーゼ、ペルオキシダーゼおよびポリフェノールオキシダーゼ活性が著しく増大する。一方、チャ輪斑病菌を接種した場合、酵素活性の増大は赤葉枯病菌の場合に比較して緩やかであり、両者に対するチャの生体防御関連酵素の活性化に顕著な差異が認められる(図2)。
  • 以上の結果から、'やぶきた'ではチャ赤葉枯病抵抗性の発現に伴い,キチナーゼ、ペルオキシダーゼおよびポリフェノールオキシダーゼが活性化することが明らかである。

成果の活用面・留意点

  • チャ輪斑病感染では、罹病性のため病害抵抗性発現が顕在化せず、酵素活性化が弱い。
  • 茶樹の耐病性の検索指標として、これらの生体防御関連酵素活性を利用できる。
  • チャ生体防御関連酵素はその品種の病害抵抗性の程度および病原微生物の違いにより活性化の程度,活性化までの時間が異なる場合がある。

具体的データ

図1.茶葉への病原菌接種法及び粗酵素液抽出法

表1. チャ病害抵抗性関連酵素の活性測定法
表2. チャ赤葉枯病菌およびチャ輪斑病菌のやぶきた切り離し葉における病斑形成

図2.チャ赤葉枯病菌およびチャ輪斑病菌接種葉における病害抵抗性関連酵素活性の経時的変化

その他

  • 研究課題名:チャの主要病害に対する育種素材の病害抵抗性の評価
  • 予算区分:交付金、特別研究員
  • 研究期間:2001~2005年度
  • 研究担当者:吉田克志、本間知夫(東京医科歯科大)、宮崎昌宏、武田善行
  • 発表論文等:吉田ら (2000) 日作東海支部報130:17-21