茶園から地下水にいたる深層土壌における脱窒の特徴
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要約
深さ20m を超える茶園下層土中には表層土壌と同程度の密度の脱窒菌が存在する。窒素安定同位体自然存在比から推定すると、下層土でも地下水面周辺やすき込まれた有機物層では脱窒が起こっている可能性がある。
- キーワード:茶園、深層土壌、窒素安定同位体自然存在比、有機物、地下水面、脱窒
- 担当:野菜茶研・茶業研究部・土壌肥料研究室
- 連絡先:0547‐ 45‐ 4924
- 区分:野菜茶業・茶業、共通基盤・土壌肥料
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
農耕地に施肥された窒素は、土壌中で様々な作用を受けながら一部が下層へ浸透し、地下水へと溶脱する。溶脱窒素は周辺水系の硝酸汚染を引き起こすため、農耕地や地下水を対象にして施肥窒素の動態に関する多くの研究がなされているが、溶脱過程である深層土壌を対象とした研究はほとんどない。そこで、深層土壌における施肥窒素の形態変化に関与する微生物反応、特に脱窒反応の特徴を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 静岡県牧ノ原台地の南端に位置する茶園において12 月に、表層から地下水の不透水層までの土壌をボーリングにより連続的に採取した。採取地点の概要は表1のとおりである。
- 希釈平板法で計数した土壌中の細菌数および最確値法で計数した脱窒菌数は、どちらも表層から深さ1m 付近まで減少するが、すき込まれた有機物が存在する深さ1.0 ~1.35m の有機物層においては表層と同程度にまで増加し、これより深くなると一度減少するが、やがて増加して、25m を超える深層土壌でも表層と同程度存在する(図1)。
- 脱窒活性は表層土壌で高く、その直下で急激に低下するが、有機物層は表層土壌の50%の活性があり、さらにその下層では急激に低下する(図2)。この脱窒活性の違いは脱窒菌が利用する可溶性有機態炭素量の違いによると考えられ、土壌に炭素源としてグルコースを加えて3 日間培養した後の脱窒能は、添加直後の脱窒能に比べ上昇する(図2)。
- 土壌中の硝酸態窒素の窒素安定同位体自然存在比は、有機物層と地下水面において上昇することから、深層土壌であるにもかかわらず、これらの部位では脱窒が起こっている可能性がある(図3)。
成果の活用面・留意点
- 施肥窒素の動態解明、および溶脱窒素除去技術の開発のための基礎的知見となる。
- 細菌数と脱窒菌数は、計数用培地にニュートリエントブロスを使用した場合の値である。
具体的データ
その他
- 研究課題名:脱窒を活用した茶園土壌における溶脱窒素除去技術の開発
- 予算区分:環境省・地球環境保全「茶園環境」
- 研究期間:1997 ~2001 年度
- 研究担当者:徳田進一、宮地直道、早津雅仁(静岡大学)、加藤忠司(退職)
- 発表論文等:1)徳田ら(1998 )茶研報87 (別):78‐ 79
2)徳田・早津(1999 )土肥誌講要45 :62